9月16日(月)

★萩のトンネル真上ぱらぱら空があり  正子
萩の花は古くから和歌などに詠われている、文学的名花です。それを「萩のトンネル」として現代的センスで取り上げ、下から空を見上げました。「真上ぱらぱら」とはまた、萩の花の形と咲きようをなんと如実に、そして楽しく表現されたものでしょうか。(小西 宏)

○今日の俳句
とんぼうの列なして行く空かろし/小西 宏
とんぼうが列を作って飛んでゆく楽しい空となった。すいすいと飛んでゆくとんぼうに空まで軽くなった感じだ。(高橋正子)

○毬栗(いがぐり)

[毬栗/横浜市緑区北八朔町]

★落栗やなにかと言へばすぐ谺/芝不器男
栗の木があるところは、山静かな里。落ちた栗も拾われずに転がっている。ちょっとした言葉も響いて谺となる。自分の発した声の谺は、もっとも自分の心がよく受け止めているのではないか。(高橋正子)

★毬栗に袋かぶせてありにけり/高橋将夫
★毬栗や身籠りし山羊つながるる/大串章
★毬栗や祖母に優しく叱られし/大串章
★毬栗を蹴つて日暮れの村となる/小澤克己
★毬栗の落ちてすとんと暗くなる/杉浦典子
★毬栗のやや枯れてゐる掌/田畑幸子
★毬栗を剥くに大事や鎌と足/田中英子

栗の季節になった。栗の季節は意外と早い。まだ残暑が残る中、店頭に栗が現れる。農村や山村では、家に栗の木をもっている家も多い。栗には虫がつきやすいので、昨年まで豊作で栗を送ってきてくれていたのに、今年は突然虫にやられて栗の木が枯れたと報告を受けることもある。送ってきた栗は毬が外してあるのだが、数個は毬栗のまま入っている。それをしばらく飾って楽しんだりするが、毬栗も生き物、次第に色艶が失われてくる。そうなると飾りとしてはおしまい。毬を外して食べることになる。毬栗のまだ青いのが、可愛い。まだ暑い中なのに、毬栗が青々と育っているのを見ると、もうすぐ涼しくなる、もうすぐ栗が食べれるとうれしくなる。愛媛の山村の内子町は蝋の生産で財をなした町で、いまでも古い町並みが残っている。ここは、栗の産地。栗の季節、車を運転してこの辺りを通ると、道にあふれるほど収穫した栗が山積みされている。いったいどの位の栗が収穫されているのか。我が家ではよく栗の渋皮煮を作った。好評であったが、これは土井勝著の「今日の料理」の教えの通りに作っていた。土井勝先生の料理の本にはに随分恩恵を受け、感謝もしている。

★毬栗の青々としてまん丸し/高橋正子

 クリ(日本栗・学名Castanea crenata)とはブナ科クリ属の木の一種。日本と朝鮮半島南部原産。中華人民共和国東部と台湾でも栽培されている。クリのうち、各栽培品種の原種で山野に自生するものは、シバグリ(柴栗)またはヤマグリ(山栗)と呼ばれる、栽培品種はシバグリに比べて果実が大粒である。また、シバグリもごく一部では栽培される。落葉性高木で、高さ17m、幹の直径は80cm、あるいはそれ以上になる。樹皮は灰色で厚く、縦に深い裂け目を生じる。葉は長楕円形か長楕円状披針形、やや薄くてぱりぱりしている。表はつやがあり、裏はやや色が薄い。周囲には鋭く突き出した小さな鋸歯が並ぶ。雌雄異花で、いずれも5月から6月に開花する。雄花は穂状で斜めに立ち上がり、全体にクリーム色を帯びた白で、個々の花は小さいものの目を引く。一般に雌花は3個の子房を含み、受精した子房のみが肥大して果実となり、不受精のものはしいなとなる。9月から10月頃に実が成熟すると自然にいがのある殻斗が裂開して中から堅い果実(堅果であり種子ではない)が1 – 3個ずつ現れる。
 果実は単にクリ(栗)、またはクリノミ(栗の実)と呼ばれ、普通は他のブナ科植物の果実であるドングリとは区別される(但し、ブナ科植物の果実の総称はドングリであり、広義にはドングリに含まれるとも言える)。また、毬状の殻斗に包まれていることからこの状態が毬果と呼ばれることもあるが、中にあるクリノミ自体が種子ではなく果実であるため誤りである。毬果とは、松かさのようなマツ綱植物の果実を指す。
 日本のクリは縄文時代人の主食であり、青森県の三内丸山遺跡から出土したクリから、縄文時代にはすでに本種が栽培されていたことがわかっている。年間平均気温10 – 14℃、最低気温氷点下20℃をくだらない地方であれば、どこでも栽培が可能で、国内においてはほぼ全都道府県でみられ、生産量は、茨城、熊本、愛媛、岐阜、埼玉の順に多い。

◇生活する花たち「葛の花①・葛の花②・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

9月16日

●下地鉄
蜩や晩鐘暮れる独りたび★★★
高階に松籟聞いて叉寝かな★★★
秋風が窓の形で入りくる★★★★
「窓の形」に、秋風の透明感とさらさらとした心地よさが読み取れる。(高橋正子)

●河野啓一
 台風18号
列島をつつむがごとく秋台風★★★
渡月橋ひたひた洗う秋の水★★★
台風や人間界には構いなし★★★

●小口泰與
点滴のしずく見上ぐや秋の暮★★★★
点滴の終のしずくや秋の暮★★★
秋ばらを豆皿に乗せ病室へ★★★

佃 康水
鶏頭花幹紅に真っ赤かな★★★★
鶏頭は花だけでなく、茎幹もたくましく赤い色が通っている。そこに目を付けたのが新鮮で、鶏頭全体を生き生きと詠むことになった。(高橋正子)
  
凝らし見るほどに増えゆく秋茗荷★★★
山の湯を出でて吹かるる夕芒★★★

●桑本栄太郎
<台風18号近畿接近>
颱風の緊急警報夜もすがら★★★
雄叫びの風雨に目覚む野分荒れ★★★
水嵩を極め野分の渡月橋★★★

●多田有花
風雨激しく叩く秋の夜の窓★★★
嵐去りはや鳴き始む秋の蝉★★★
ごうごうと野分の名残森に吹く★★★

●高橋秀之
台風一過黒から白へ雲の色★★★
白米とわさび醤油でおくら食う★★★
鳥の群れ高く遠くへ秋の空★★★★
「高く遠くへ」に、秋空の本質が詠まれている。群れて飛んでゆく鳥が静の中の動として印象的だ。(高橋正子)

●小西 宏
秋の洒落けむり楽しき目黒かな★★★
台風の後の木漏れ日靴の音★★★
野分去り西空広き富士裾野★★★★

●黒谷光子
風少しあるらし白き萩たわわ★★★
走り根の隆々として秋の樟★★★
街中の小さき庭に糸瓜垂る★★★

※台風お見舞い申し上げます。
豊橋に上陸した台風18号は進路とは違う大阪京都などにも大きな被害をもたらしておりますが、会員のみな様には被害がなくて安心いたしました。東海地方の皆様がた大丈夫でしたでしょうか。