6月16日(月)

★薔薇垣と薔薇のアーチに人の住む  正子
初夏の明るい日差しの中に薔薇垣があり薔薇のアーチがある。その輝かしさと芳しさに心ときめき圧倒される。そしてしばしの後にようやく気付くのだ。この家にも住む人のあることを。不思議だろうか、当たり前だろうか? (小西 宏)

○今日の俳句
山桑やまだ濡れている朝の道/小西 宏
「山桑」は、季語では山帽子のこと。梅雨にはいってもまだ咲いている山帽子があるが、まだ雨に濡れている朝の道に白い山桑の花を見つけると、湿りのある中にもすがすがしさを思う。(高橋正子)

○玫瑰(はまなす)

[玫瑰/横浜・港の見える丘公園]

★玫瑰の丘を後にし旅つづく/高浜虚子
★玫瑰や今も沖には未来あり/中村草田男
★搾乳婦来て玫瑰にひざまづく/堀口星眠
★はまなすや裏口に立つ見知らぬ子/中村苑子
★はまなすや人の泳がぬ北の海/橘 昌則
★はまなすや破船に露西亜文字のこり/原 柯城
★はまなすや親潮と知る海の色/及川 貞

 はまなすと言えば、草田男の「玫瑰や今も沖には未来あり」がすぐに思い出される。はまなすは夏の花である。この句が詠まれた場所は、どこであろうか。調べたことはないが、足元に咲く薔薇色のはまなすの花に佇って沖を見ると、世の中が変わってきても、やはり、「未来」があると信じられる。沖の水平線とその空のあたりに未来があると思える。
 その後「知床旅情」にも歌われた。森繁久弥や加藤登記子の歌声が耳に聞こえるが、遠く海を見ながら、遠くを思いつつ歌っている雰囲気だ。横浜の「港のみえる丘公園」内の薔薇園を外れたところに、玫瑰が咲いていた。園芸種であろうが、そこからも港の海が見える。自生の玫瑰を一度見てみたいと思っている。

★はまなすに躓く先に海がある/高橋正子

 ハマナス(浜茄子、浜梨、玫瑰、学名:Rosa rugosa)は、バラ科バラ属の落葉低木。夏に赤い花(まれに白花)を咲かせる。根は染料などに、花はお茶などに、果実はローズヒップとして食用になる。皇太子徳仁親王妃雅子殿下のお印でもある。晩夏の季語。東アジアの温帯から冷帯にかけて分布する。日本では北海道に多く、南は茨城県、島根県まで分布する。主に海岸の砂地に自生する。1-1.5mに成長する低木。5-8月に開花し、8-10月に結実する。現在では浜に自生する野生のものは少なくなり、園芸用に品種改良されたものが育てられている。果実は、親指ほどの大きさで赤く、弱い甘みと酸味がある。芳香は乏しい。ビタミンCが豊富に含まれることから、健康茶などの健康食品として市販される。のど飴など菓子に配合されることも多いが、どういう理由によるものかその場合、緑色の色付けがされることが多い。中国茶には、花のつぼみを乾燥させてお茶として飲む玫瑰茶もある。「ハマナス」の名は、浜(海岸の砂地)に生え、果実がナシに似た形をしていることから「ハマナシ」という名が付けられ、それが訛ったものである。ナス(茄子)に由来するものではない。アイヌ語では果実をマウ(maw)、木の部分をマウニ(mawni)と呼ぶ。バラの一種であり、多くの品種が存在する。北米では観賞用に栽培される他、ニューイングランド地方沿岸に帰化している。イザヨイと呼ばれる園芸品種は八重化(雄蕊、雌蕊ともに花弁化)したものである。ノイバラとの自然交雑種にコハマナスがある。このほかシロバナハマナス、ヤエハマナス、シロバナヤエハマナスなどの品種がある。バラの品種改良に使用された原種の一つで、ハマナスを交配の親に使用した品種群を「ルゴザ系」と謂う。

◇生活する花たち「蛍袋・時計草・紫陽花」(横浜日吉本町)

6月14-16日

6月16日

●祝恵子
茅の輪くぐる吾らシルバー歩き会★★★★
家族それぞれの無病息災を願って茅の輪をくぐるのだけれど、歩き会のシルバー仲間も同じこと。老いを屈託なく受け止めてくぐる青い茅の輪も涼やかだ。(高橋正子)

金糸梅神宮の森はすぐそこに★★★
ホタルブクロ遠き思いを包み込む★★★

●小口泰與
鮎釣りの鮎の長竿競いけり★★★
噴煙の北にたふるる植田かな★★★★
玉の汗ぼうだとなりて目覚めけり★★★

●古田敬二
偽りのなき紫に茄子の花★★★
やわらかき棘持て胡瓜ぶら下がる★★★★
引き抜けばバリバリ音して夏の草★★★

●桑本栄太郎
水の無き石の流れや夏の川★★★
白壁の農家田中に青田かな★★★
一つずつ落ちて一途や沙羅の花★★★★

●高橋信之
紫陽花に午前六時の明るい朝★★★★
梅雨も一休みし、紫陽花に午前六時の朝日が差して花を明るくしている。さほど暑くもなく、涼しすぎもしない、清々しい朝だ。(高橋正子)

近づけば顔上ぐ昼咲月見草★★★
薔薇ひらく農の庭なり空の青★★★

6月15日

●小口泰與
風たちて矢車草の乱れあう★★★★
郭公や棚田の水のまんまんと★★★
ねじ花や夕日の影もねじれしか★★★

●桑本栄太郎
川風を受けて淡きや合歓の花★★★★
「風に乗る」は、風に乗って運ばれる、移動するの意味が含まれるので句意がわかりにくい。合歓の淡い花の咲く枝が川風を受け、煽られている様子は、優しさのなかにも合歓の花の強さが見える。

梅雨冷えや葉のひるがえり風の歌★★★
一途なる少年の日よ椎の花★★★

●小西 宏
梅雨晴のひと葉ひと葉に光透く★★★★
青空に焦がれ乾きし蚯蚓かな★★★
蛍飛び人の頭の黒きこと★★★

●多田有花
山行を終えて乾杯生ビール★★★★
山行(さんこう)は、山歩き、山遊び、登山の意味。登山では頂上に至った達成感とそこからの眺望は、得難いもの。登山というほどのものでなくても山を歩き、山に遊び汗を流したあとの乾杯の生ビールの爽やかなこと。さっぱりとした句。(高橋正子)

廃線のトンネルにある涼しさよ★★★
山法師の花びら積もる山路ゆく★★★

●川名ますみ
きらめきはアイスのふくろ熱の床★★★★
枕辺にたべさしのアイスキャンディー★★★
驟雨過ぎ銀杏並木に碧深し★★★

6月14日

●小口泰與
郭公の声響き合う岸辺かな★★★★
郭公のこだま飛び交う駒出池★★★
目覚めたる浅間や佐久の青田道★★★

●桑本栄太郎
ことさらに日差し明るき梅雨晴間★★★
あおき香も音に乗せ来る草刈機★★★★
拠りどころ玉巻く葛の虚空かな★★★

●高橋秀之
百円を握り園児はアイス買う★★★★
暑い日には、アイスが何よりのたのしみな子どもたち。とくに園児は買い物が自分で出来る喜び
も加わるので、アイスを手にした満足感はたかい。嬉しそうな園児の顔が浮かぶ。(高橋正子)

扇風機家族に向けて首を振る★★★
歓声がゴールの度に夏の朝★★★