11月16日(土)

★落葉ふる空の青さのどこまでも  正子
落葉の降る様を見上げていると、地に近づくに従い大きく広がっていくように見えます。その逆に、落ち葉の来る元は空の一点。焦点の如くどこまでも奥深くあり、その奥深くまでどこまでも青が深まっていくようです。先生の句から得た私の印象は、上の如きものでした。胸がいっぱいに広がる思いです。(小西 宏)

○今日の俳句
欅立つ落葉きらめく陽の中に/小西 宏
情景がよく整理されている。陽を受けてきらめきながら散る落葉。その中心に黄葉した大きな欅の存在が示されている。(高橋正子)

○欅黄葉(けやきもみじ)

[欅黄葉/横浜日吉本町]

★色付や豆腐に落て薄紅葉 芭蕉
★小原女の足の早さよ夕もみぢ 蕪村
★日の暮れの背中淋しき紅葉哉 一茶
★山に倚つて家まばらなりむら紅葉 子規
★瀑五段一段毎の紅葉かな 漱石
★阿賀川も紅葉も下に見ゆるなり 碧梧桐
★たかあしの膳に菓子盛り紅葉寺 虚子
★紅葉してしばし日の照る谷間かな 鬼城
★山門に赫と日浮ぶ紅葉かな 蛇笏
★岩畳をながるゝ水に紅葉かな 石鼎
★黄葉一樹輝きたてり紅葉山 泊雲

★仰ぎ見る欅黄葉と青空を/高橋信之
★欅黄葉いま北国の空が欲し/高橋正子

 千葉公園には、イロハモミジ、イチョウ、トウカエデ、ケヤキ、カツラ、ニワウルシ、シマサルスベリ、トチノキ、ハナミヅキ、ヒメシャラ、ドウダンツツジなどの紅葉・黄葉する樹木があります。10月中~下旬からケヤキ、サクラ、カツラなどが色づきはじめ、11月上旬から中旬にイロハモミジ、トウカエデ、トチノキが見ごろになり、11月下旬から12月上旬にはボタン園の大イチョウが見事な黄葉を見せます。
 今年の紅葉の見ごろ時期は、(社)日本観光振興協会の予想によれば「例年よりやや遅くなる見込み」だそうです。因みに東京(明治神宮外苑)の見ごろ時期は、12月上旬~中旬(例年11月下旬~12月上旬)の予想です。
 紅葉は最低気温が8度になると始まり、5~6度以下になると色づきが進むといわれます。前記の予想は、9月の平均気温から予想する気象庁作成の予測式を用いており、今年は9月の平均気温が例年より高かったため、紅葉の見ごろが「やや遅れる」予想結果となっています。
 紅葉・黄葉の色は樹種によって概ね同じですが、ケヤキの場合は、黄~橙~赤と樹木によって紅葉の色が異なります。同一の樹木が年によって紅葉色が変わることはなく、樹木の個体ごとに紅葉する色が遺伝的に決まっていることが分かっています。千葉公園でも、黄色のものから赤色のものまで色とりどりのケヤキが見られます。(千葉市のホームページより)

◇生活する花たち「十両(やぶこうじ)・万両・白文字(しろもじ)」(東京白金台・国立自然教育園)

11月16日

●迫田和代
花柚子の話の渦に故郷を★★★★
「花柚子」は、柚子の花のことではなく、本柚子に対して花の香りを楽しむもので料理の付け合わせやジャムなどに主に利用されるとのこと。花柚子の話題が盛り上がり、故郷の花柚子を思い起こした。話題が自分の心に広がった。(高橋正子)

遠回り桜紅葉の落花避け★★★
秋雨や遠い旅にも別れあり★★★

●小口泰與
小春日や木組み大橋奈良井宿★★★
山茶花のつぼみほころぶ朝かな★★★
帰り花はらから集う法事かな★★★

●多田有花
枯蓮の無残を愛でて池巡る★★★
階段を下りる足音冬の朝★★★
お湯を出て母と眺める冬紅葉★★★

●桑本栄太郎
小雨降る川の真中やつがい鴨★★★
柿灯る雨の明かりの土塀かな★★★

もみづれば在所愛しくありにけり★★★★
もみじすると、いつも住まうあたりも美しくなり、なかなか良いところではないかと改めて思う。(高橋正子)

●黒谷光子
万歩計つけて駅へと冬帽子★★★★
「万歩計」と「冬帽子」とのとりあわせが自然であって、絶妙。防寒に帽子を冠り、しっかりと歩く。心身ともに健やか。(高橋正子)

近道をして通る路地花八つ手★★★
夕映えになお濃く燃えて冬紅葉★★★

●河野啓一
日の中に庭の小菊の咲き乱れ★★★
山茶花の真白に咲けるしおらしさ★★★
冬バラの小さき花のわびしくて★★★

●祝恵子
市場ではマグロの解体呼び物に★★★
イベントに大魚の並ぶ冬始め★★★
水槽の河豚一匹を掬い見せ★★★

●小西 宏
雲がありその影があり雪の富士★★★

【原句】しんとして湖みどりなる冬木立
【添削】しんとして湖(うみ)みどりなり冬木立★★★★
冬木立としんとしずまった湖のみどり。静謐な絵画を見るようだ。そしてまた、洒落た句だ。(高橋正子)

街路樹の枝光りだす冬初め★★★