■9月ネット句会■
■清記/20名60句
01.十五夜のまだ空蒼き嶺の奥
02.彼岸花大地の憤怒やも知れず
03.秋澄むや肺の奥まで丘の風
04.福耳でおはす観音照紅葉
05.声出して論語読む人月今宵
06.暫くと書きて筆措く紅葉宿
07.道々に城見える町子規忌来る
08.えのころを手に夕風の川に沿い
09.新米研ぐ水さらさらと指伝う
10.田一枚伸ばす散歩やきりぎりす
11.秋風や暗記せしこと早忘る
12.芝刈り機小石とばすや鉦叩
13.神殿に波打つ音や大満月
14.十六夜の海に種牡蠣沈められ
15.筏曳き漁船沖ゆく鰯雲
16.ドングリの朝の輝き拾いけり
17.陽を受けてどんぐり朝の輝きを
18.我が街も今朝から椎の実零れ初む
19.少年の無口に答う葛の花
20.見渡して花ひとつなき葛ケ原
21.秋の野に遊びて夜の薬風呂
22.本堂を抜ける風あり秋澄めり
23.ぶどう棚路地の店舗の京人形
24.子に約束ふうせんかずらのハートの種
25.群青の空の真中に名月あり
26.忙しや花粉だんごの秋の蜂
27.新さんまどの海見つめていたのやら
28.ちちろ鳴く狭庭の隅に木漏れ日が
29.稲の秋遍路道にも香り立ち
30.鄙の里鐘の音遠く秋澄める
31.大雨に洗われしドームと赤とんぼ
32.山近く明るく揺れる芒原
33.肩の冷え名月後に車椅子
34.笙の音の秋風にのり献花式
35.新豆腐水に放てば水はじく
36.羽音たて花から花へ秋の蝶
37.秋天のただ一枚のああ青よ
38.秋天の隠すもの無しあっけらかん
39.バス降りてここより歩く秋高し
40.赤とんぼの群れに飛び込む河川敷
41.秋まつり奉納花火の大きな輪
42.秋風に速き流れの雲ひとつ
43.隙間なく里芋積まれ届きたり
44.灯にひかる茄子それぞれの姿して
45.枝豆のポタージュスープ青さらり
46.語らいの窓にさし込む満月光
47.宿半天羽織りて友と花野ゆく
48.身にしむやコスモスかくも愛らしく
49.窓に響く祭太鼓のリズム聴く
50.秋の風ふわりと流れ高き雲
51.秋晴れて紅白トランプに拍手湧く
52.疲れた体にすかっと爽快ソーダ水
53.雨上がり西瓜が涼しく並んでる
54.天然のうれしなつかし鮎の味
55.どんぐりの緑ころがる風の朝
56.風清き小さな庭に秋のバラ
57.敬老の日の絵手紙の幼き字
58.満月光稲田の水を煌めかす
59.高原の空へ手を伸べ林檎もぐ
60.稲穂そよぐ稔りの音を風に乗せ
◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、9月14日(日)午後6時から始め、同日(9月14日)午後9時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、9月15日(月)正午
※2) 伝言・お礼等の投稿は、9月15日(月)正午~9月16日(火)午後6時です。
★葛の花匂わすほどの風が起き 正子
葛の花は秋の七草の一つで、何処までも蔓が伸びゆくほど繁殖力が旺盛です。葉が大きく茂り、葉裏には紅紫の可愛い花を咲かせており、微かでも風が起こると葉裏の花のほのかな香りが漂いほっとこころ癒されます。(佃 康水)
○今日の俳句
韮の花浸す野川の音澄むへ/佃 康水
韮の花は新涼の季節に先駆けて咲く。摘んだ韮の花は野川に浸すと涼やかな花となる。「清ら」は主情が強いが、「澄む」は写生であっても作者の深い内面が出る。(高橋正子)
○唐辛子

[唐辛子/横浜日吉本町]
★唐辛子男児(おのこご)の傷結ひて放つ 草田男
男の児は、手足に傷などよく負うものだ。 膝でも擦りむいたのだろうか、包帯をして、また遊びに行かせた。唐辛子が熟れるころは、「天高し」ころ。気候もよく、男児はことに日暮れ際までよく遊ぶ。ぴりっとした唐辛子の可愛さは、また男児の元気な可愛さに通じる。(高橋正子)
★青くても有べき物を唐辛子 芭蕉
★鬼灯を妻にもちてや唐がらし 也有
★うつくしや野分のあとのとうがらし 蕪村
★寒いぞよ軒の蜩唐がらし 一茶
★雨風にますます赤し唐辛子 子規
★赤き物少しは参れ蕃椒 漱石
★一莚唐辛子干す戸口かな 碧梧桐
★辛辣の質にて好む唐辛子 虚子
★誰も来ないとうがらし赤うなる 山頭火
★唐がらし熟れにぞ熟れし畠かな 蛇笏
★秋晴れやむらさきしたる唐辛子 夜半
★戸袋の筋にかけあり唐辛 石鼎
★庭園に不向きな赤い唐辛子 鷹女
★唐辛子干して道塞く飛鳥びと 秋櫻子
★秋の日の弱りし壁に唐辛子 みどり女
★炎ゆる間がいのち女と唐辛子 鷹女
★てのひらに時は過ぎゆく唐辛子 不死男
★唐辛子わすれてゐたるひとつかな 楸邨
熟れた唐辛子は可愛い。店で唐辛子の実を束ねて売っているので、それを買い、しばらく台所に飾って楽しんでそれから使う。信之先生は、うどんには、七味唐辛子でなく、この赤い唐辛子を細く輪切りにしたのを入れるのが習慣だ。きんぴらには、辛いというくらい入れたい。すでに輪切りにした唐辛子を売っているが、それではなく、丸のままのを買って、鋏で丹念に切る。
農家には、どこの家の畑の隅に唐辛子を植えていた。熟れると茎ごと抜いて束ね。家の軒下など日陰に吊るして乾燥させた。沢山採れる家は、筵に広げて乾燥させたのだろうが、これは、見たことがない。父も、うどんにはこの唐辛子をたっぷりと入れて食べていた。七味ではない。
唐辛子のなかでも辛くない唐辛子がある。ピーマンも、ししとうも唐辛子の仲間である。父がまだ中年のころ、辛くない唐辛子といって、近所でははじめてピーマンを植えた。子どもにも食べれた。刻んで、油炒めで醤油の味付けだったと思う。唐辛子が食べれたと子どもながら自慢であった。そのせいか、いまでもシシトウや甘唐辛子が沢山手に入ると、油炒めで醤油、鰹節で佃煮のようにして食べる。これが、我が家では、娘にも人気でご飯がすすむ。
唐辛子のことで思い出したが、長野の小諸で花冠(水煙)大会をしたとき、伊那の河野斎さんが来られ、善光寺の名物の七味唐辛子をいただいた。そのとき、善光寺名物が七味唐辛子であることを知ったが、いい香りの七味唐辛子であった。河野さんは、伊那で歯科医院を営んでおられたが、偶然にも、三男のお嫁さんが、私の郷里の福山のご出身と聞いた。縁は異なもの不思議なもの、です。河野さんは急逝されたが、ご家族に林檎の木を残されて、その年の林檎の収穫のおすそわけをいただいた。お孫さんたちが俳句を作って花冠(水煙)に投句されていたので、お孫さんと、そのお母さんのお気持ちだと知った。唐辛子からひょんなところに話がずれたが、思い出したので、書き留めておいた。
★唐辛子真っ赤に熟れしをキッチンに/高橋正子
★唐辛子もう日暮だと子を呼びに/〃
唐辛子(とうがらし、唐芥子、蕃椒)は、中南米を原産とする、ナス科トウガラシ属 (Capsicum) の果実から得られる辛味のある香辛料。栽培種だけでなく、野生種から作られることもある。トウガラシ属の代表的な種であるトウガラシにはさまざまな品種があり、ピーマン、シシトウガラシ(シシトウ)、パプリカなど辛味がないかほとんどない甘味種(甘唐辛子・あまとうがらし)も含まれる。トウガラシ属は中南米が原産地であり、メキシコでの歴史は紀元前6000年に遡るほど非常に古い。しかし、世界各国へ広がるのは15世紀になってからである。
唐辛子が日本へ伝わったのは、16世紀後半のことで、南蛮船が運んで来たと言う説から南蛮胡椒、略して南蛮または胡椒とも言う。コロンブスは、唐辛子を胡椒と勘違いしたままだったので、これが後々まで、世界中で唐辛子(red pepper)と胡椒(pepper)の名称を混乱させる要因となった。現在世界中の国で多く使われているが、アメリカ大陸以外においては歴史的に新しい物である。クリストファー・コロンブスが1493年にスペインへ最初の唐辛子を持ち帰ったが忘れられ、ブラジルで再発見をしたポルトガル人によって伝播され、各地の食文化に大きな影響を与えた。ヨーロッパでは、純輸入品の胡椒に代わる自給可能な香辛料として南欧を中心に広まった。16世紀にはインドにも伝来し、様々な料理に香辛料として用いられるようになった。バルカン半島周辺やハンガリーには、オスマン帝国を経由して16世紀に伝播した。
日本で栽培されているのは主にトウガラシだが、沖縄や伊豆諸島ではキダチトウガラシの品種の島唐辛子が栽培されている。トウガラシ属が自生している南米では、ウルピカなどの野生種も香辛料として使われる。「唐辛子」の漢字は、「唐から伝わった辛子」の意味であるが、歴史的に、この「唐」は漠然と「外国」を指す語とされる。英語では「チリ(chili)」または「チリ・ペッパー (chili pepper)」と言う。胡椒とは関係が無いにも関わらず「ペッパー」と呼ばれている理由は、ヨーロッパに唐辛子を伝来させたクリストファー・コロンブスがインドと勘違いしてアメリカ大陸に到達した際、唐辛子をインドで栽培されている胡椒の一種と見なしたためである。それ以来、トウガラシ属の実は全て「ペッパー」と呼ばれるようになった。沖縄県では島唐辛子や、それを用いた調味料をコーレーグス(コーレーグース)と呼ぶが、これは高麗胡椒の沖縄方言読みとも、「高麗薬(コーレーグスイ)」が訛ったものだともされる。唐辛子の総称として鷹の爪を使う者もいるが、「鷹の爪」はトウガラシ種の1品種である。
◇生活する花たち「女郎花・葛の花・萩」(四季の森公園)
