12月14日(土)

★孟宗の冬竹林に日がまわり  正子
孟宗竹の藪。冬の日差しを受けてまっすぐな影である。冬の陽は動きが速い。往きに見た孟宗竹に当たる影とかえりに観るそれは明らかに違い、陽が動いたことが分かる。短い冬の日の藪のあり様が詠われている。(古田敬二)

○今日の俳句
山茶花や軒端の薪の真新し/古田敬二
山茶花が咲き、軒端には真新しい薪が積み重ねられて、本格的な冬を迎える準備が整った。「薪の真新し」がさっぱりとしている。(高橋正子)

○櫟黄葉(くぬぎもみじ)

[櫟黄葉/横浜・四季の森公園] 

★冬紅葉長門の国に船着きぬ 誓子
★冬紅葉美しといひ旅めきぬ 立子
★強飯の粘ることかな冬紅葉 波郷
★楢櫟つひに黄葉をいそぎそむ/竹下しづの
★墓四五基櫟黄葉の下にあり/穴井研石
★櫟黄葉舞いて虚空の広さかな 格山
★露天湯や椚黄葉を傘として 光晴
★風と舞い谷をくだるや冬黄葉 陽溜
★鈍色の空にきはだつ冬黄葉 一葉

 クヌギ(櫟)は、ブナ科コナラ属の落葉樹のひとつ。新緑・紅葉がきれい。クヌギの語源は国木(くにき)からという説がある[要出典]。古名はつるばみ。漢字では櫟、椚、橡などと表記する。学名はQuercus acutissima。樹高は15-20mになる。 樹皮は暗い灰褐色で厚いコルク状で縦に割れ目ができる。葉は互生、長楕円形で周囲には鋭い鋸歯がならぶ。葉は薄いが硬く、表面にはつやがある。落葉樹であり葉は秋に紅葉する。紅葉後に完全な枯葉になっても離層が形成されないため枝からなかなか落ちず、2月くらいまで枝についていることがある。花は雌雄別の風媒花で4-5月頃に咲く。雄花は黄色い10cmほどの房状に小さな花をつける。雌花は葉の付根に非常に小さい赤っぽい花をつける。雌花は受粉すると実を付け翌年の秋に成熟する。実は他のブナ科の樹木の実とともにドングリとよばれる。ドングリの中では直径が約2cmと大きく、ほぼ球形で、半分は椀型の殻斗につつまれている。殻斗のまわりにはたくさんの鱗片がつく。この鱗片が細く尖って反り返った棘状になっているのがこの種の特徴でもある。実は渋味が強いため、そのままでは食用にならない。
 クヌギは幹の一部から樹液がしみ出ていることがある。カブトムシやクワガタなどの甲虫類やチョウ、オオスズメバチなどの昆虫が樹液を求めて集まる。樹液は以前はシロスジカミキリが産卵のために傷つけたところから沁み出すことが多いとされ、現在もほとんどの一般向け書籍でそう書かれていることが多いが、近年の研究で主としてボクトウガの幼虫が材に穿孔した孔の出入り口周辺を常に加工し続けることで永続的に樹液を浸出させ、集まるアブやガの様な軟弱な昆虫、ダニなどを捕食していることが明らかになった。いずれにせよ、樹液に集まる昆虫が多い木として有名であり、またそれを狙って甲虫類を捕獲するために人為的に傷つけられることもある。ウラナミアカシジミという蝶の幼虫はクヌギの若葉を食べて成長する。またクヌギは、ヤママユガ、クスサン、オオミズアオのような、ヤママユガ科の幼虫の食樹のひとつである。そのため昆虫採集家はこの木を見ると立ち止まってうろうろする。
 クヌギは成長が早く植林から10年ほどで木材として利用できるようになる。伐採しても切り株から萌芽更新が発生し、再び数年後には樹勢を回復する。持続的な利用が可能な里山の樹木のひとつで、農村に住む人々に利用されてきた。里山は下草刈りや枝打ち、定期的な伐採など人の手が入ることによって維持されていたが、近代化とともに農業や生活様式が変化し放置されることも多くなった。(ブログ「菜花亭日乗」より)

◇生活する花たち「アッサムチヤ・グランサム椿・からたちの実」(東京・小石川植物園)
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12月14日-15日


12月15日

●小口泰與
百年の酵母や冬の醤油蔵★★★
木守や酵母あふるる太柱★★★

干大根利根の河原のひろごれり★★★★
干大根の色と冬景色となった河原の色がよくなじんで、風の吹く様、日の照る様が想像できる。(高橋正子)

●古田敬二
色づけり冬のシベリア夕景色★★★

冬の旅動かぬ位置に北極星★★★★
昔、北極星は動かないことから旅をする人の目印であった。今でも旅にあれば方位を確かめるための目印となる。「冬の旅」が荒涼とした星空
を想像させてくれる。(高橋正子)

シベリアを飛ぶ主翼の先の冬の星★★★

●桑本栄太郎
山膚のうすく赤きや冬の朝★★★
新駅の高架ホームや冬田晴れ★★★★
冬田の中の新駅の高架ホームは突如として現れたコンクリートと鉄の塊の趣き。それに対して冬田の上に広がる晴天の空のさっぱりと晴れやかなこと。(高橋正子)

萎れゆく風の窓辺の懸菜かな★★★

●黒谷光子
(永観堂)
冬紅葉見返り佛の堂包む★★★
冬紅葉開山堂へと臥龍廊★★★
見返り佛脇より拝み冬ぬくし★★★

12月14日

●小口泰與
喉飴を口に入れたる小春かな★★★
焙煎の上々に出来小春かな★★★
神の旅浅間は雪を賜わりぬ★★★★

●迫田和代
冬帝に土手道駆ける子に幸を★★★
楽しいな冬日の射す道今日もまた★★★★
「楽しいな」はためらいのない、そのままの気持ち。冬日がぽかぽかと差す道は今日もまた楽しい道となるのだ。(高橋正子)

窓の外風にも負けずに冬の薔薇★★★

●桑本栄太郎
錦木の残る紅葉や剣の先★★★
しぐれつつ青空のぞく嶺の奥★★★
ベランダの窓に小さき干菜影★★★

●古田敬二
機窓から句帳へ冬の陽が明るい★★★★
乗り物の車窓側に乗るとこんな場面によく出合う。句帳のページの白さに気持ちよく句が認められそうだ。(高橋正子)

雲海の果てなきを見る冬の旅★★★
雲海を崩して走る冬の風★★★