10月14日(月)

★甘藷よく実入り刃物に当たる音  正子
サツマイモの時期です。ちょうど今鬼まんじゅうを作っているところです。昨日収穫したイモと先日朝市で買ったイモではほうちょうの刃の入り方が違います。新鮮なイモは素直に刃を受けて切れますが古くなると水分が抜けて切る面がデコボコになります。よく実入りした甘藷はサクサクといい音をして切れてゆきます。さてどんなごちそうになるのでしょう。そんなことを想像させる句です。 (古田敬二)

○今日の俳句
ひそと鳴る秋播き種はポケットに/古田敬二
秋播きの種をポケットに入れて、これから畑に出かけるのか。「ひそと鳴る」には、種の小ささもあるが、その音を一人聴きとめた作者の種への愛おしみがある。軽やかながら味わいがある句。(高橋正子)

○力芝(チカラシバ)

[力芝/横浜・横浜市港北区松の川緑道] [力芝/横浜・四季の森公園]

★力芝ひかりまみれの昼下がり/高橋正子
★畦道の力づよさに力芝/高橋正子
★理科教師力芝をまず教え/高橋正子

 チカラシバ(力芝、学名:Pennisetum alopecuroides)は、単子葉植物イネ科チカラシバ属の多年草。道端によく見かける雑草のひとつで、ブラシのような穂が特徴的である。地下茎はごく短く、大きな株を作る、根元から多数の葉を出す。葉は細長く、根元から立ち上がる。葉はやや丸まる。花茎は夏以降に出て、真っすぐに立つ。花軸は枝分かれせず、先端近くの軸に多数の針状の毛に包まれた小穂がつく。小穂は最初は軸から斜め上に向けて出るが、果実が熟するにつれて軸から大きい角度をもつようになり、つまり開出して、全体としてビン洗いのブラシや、試験管洗いのような姿になる。果実が熟してしまうと、果実は小穂の柄の部分から外れるので、あとには軸だけが残る。小穂は短い軸の先に一つだけつく。小穂の基部の軸から針状の毛が多数伸びる。小穂は披針形で長さ7mmほど、二つの小花を含むが、一つ目は果実をつけず、雄花となることも多い。第一護頴はほとんど退化、第二護頴は小穂の長さの半分。果実は先端の毛と共に外れ、これが引っ掛かりとなって大型動物の毛皮に引っ掛かるようになっている。いわゆるひっつき虫で、毛糸などの目の粗い衣服によく引っ掛かる。果実の先端から潜り込むようにして引っ掛かることが多い。
 日本、朝鮮半島、中国からフィリピン、マレー半島からインドまで分布する。日本国内では北海道南西部以南のほとんど全土で見られる。道端にはえる雑草で、大きな株になる。非常にしっかりした草で、引き抜くにも刈り取るにもやっかいである。和名の「力芝」もひきちぎるのに力がいることに由来する。穂から多数の毛が伸びてブラシ状になるものとしては、他にエノコログサ類があるが、たいていは穂の先がたれる。また、他にも穂に多数の毛や芒を出すものはあるが、このようなブラシ状のものはあまりない。

◇生活する花たち「十月桜・白ほととぎす・野葡萄」(横浜・東慶寺)

10月13日-14日

10月14日

●小口泰與
雀らの高音となりし刈田かな★★★
母郷へと高ぶる帰心初もみじ★★★
鳥渡る風雅の旅へ行きたしよ★★★

●多田有花
秋祭り太鼓の音の麓より★★★
秋陽強し屋台が町を巡行す★★★

栗の毬数多落ちたる尾根の道★★★★
尾根伝い自体楽しいものだが、それに栗の毬が落ちていたりすると、深まる秋を感じさせられ、特に拾うわけでもないのに楽しい気持ちになる。(高橋正子)

●桑本栄太郎
青空に朝の旗火や体育祭★★★★
「旗火」は、昼花火とは別物で、鳥取地方の方言かもしれないが、運動会などで開催を知らせる音だけの花火のこと。青空に向かって体育祭の開催を知らせる音だけの花火がばばーん揚がる。子供のころの運動会を思い出すような、秋冷の朝である。(高橋正子)

秋天の生駒嶺遠くうねりけり★★★
やわらかなみどり膨らむ芙蓉の実★★★

10月13日

●高橋秀之
陽に向かい赤く大きくハイビスカス★★★
夕暮れの雲間に白く秋の月★★★
秋いずこ三十度超す温度計★★★

●小口泰與
田の刈られ畔にありあり曼珠沙華★★★★
熟田の畔に沿って咲く曼珠沙華は色彩が鮮やかで日本の秋を象徴する景色の一つになっているが、稲が刈られたあと、畔に残された曼珠沙華が一抹の寂しさ、姿がありをもって咲いているのも、ありありとした姿が見えて惹きつけられる光景だ。(高橋正子)

我が在の赤城の風の冷ゆるかな★★★
秋蝶の万里の波濤越え行けり★★★

●多田有花
水平線はるかに秋の海光る★★★
秋空より飛行機ゆっくり降りてくる★★★
六甲の山襞に秋の夕日影★★★

●桑本栄太郎
雲影の稜線走り秋の峰★★★
雨雲の中に青空野分めく★★★
走り根につまずき歩む天高し★★★

■ご挨拶/10月ネット句会■

ご挨拶(高橋正子/主宰)
2、3日前の真夏日の暑さには驚きましたが、今朝は秋冷の空気に満たされた晴天の朝を迎えました。三連休となりました今回の句会は16名の方がご参加くださいました。この人数に、愛媛の砥部や松山の自宅でオフ句会を行っていたころを懐かしく思い出しました。二間続きの和室を開け放って、テーブルを囲んだり、もっと多いときは、輪になってぎっしりと座ったりして句会をしておりました。お菓子やお茶の用意、お花は何にするかなど、句会の準備も楽しみの一つであったように思います。実際のオフ句会なら、ちょうどよい人数とも言えます。ご参加ありがとうございました。入賞の皆様、おめでとうございます。移り変わる季節の句に、時が止められたことを思いますと、日々の句作が大切なのだと、知らされます。句会の管理運営は信之先生、集計は藤田洋子さんにお世話になりました。信之先生は花冠冬号(358号)の書下ろし論文原稿の執筆をしながらのことで、いつもに増して、ご負担をおかけしました。また、ご参加の同人の方には、コメントをいただき、ありがとうございました。来月の月例ネット句会は、11月10日(日)です。楽しみにお待ちください。これで十月ネット句会を終わります。

ご挨拶 (藤田洋子/スタッフ)
10月ネット句会ご参加の皆様、お世話になりありがとうございました。気温の差の著しい毎日ですが、今日は松山も気持ちのよい秋晴れとなりました。16名の皆さんの、爽やかな好季節ならではの俳句を楽しませていただきました。さまざまな異常気象など、年々薄らぐ季節感に戸惑いを感じつつも、こうして皆さんのご投句の、澄む秋の美しさや豊かな日本の秋にふれると、心澄み安らぐ思いがいたします。先生のご自宅での定例オフ句会では、何より心に残るひとときを過ごせました。オフ句会同様、毎月、誌友の皆さんと集える充実したネット句会に心から感謝しています。ご多忙の中、信之先生、正子先生、句会の管理運営を大変お世話になりました。台風26号も接近していますので、皆様お気をつけてお過ごしください。

■10月ネット句会入賞発表■

■10月ネット句会■
■入賞発表/2013年10月13日■

【金賞】
★葦の田の刈られて軽し水の音/小西 宏
青々と茂げっていた葦田の葦も枯れた。その葦をすっかり刈り取ると、葦の根元を流れていた楚々とした軽やかな音を立てて流れるようになった。清潔さがあり、なお、軽やかさがある。(高橋正子)

【銀賞】
★掛軸もすっと真すぐに糸すすき/高橋句美子
糸すすきは、すすきの中でももっとも遅く花を開く。残る虫の声のように細く、こじんまりとしている。それに合わせるように掛軸もすっと真すぐに垂れている。そのままの情景を詠んでいるが、茶席の雰囲気が出ている。(高橋正子)

【銅賞】
★朝々に柿の色付き婚近し/藤田洋子
「朝々に」の言葉が楚々としているので、嫁ぎゆく娘の雰囲気を、母親としての慈しみをもって表現できている。柿の色が光が差すように熟れると婚礼の日となるのだ。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★朝々に柿の色付き婚近し/藤田洋子
日一日と秋の深まりと共に愈々婚礼の日も近づき、身の引き締まる思いがありありと伝わって来ます。「朝ごとに」ではなく、「朝々に」との措辞が心情をよりリアルに表現されている。 (桑本栄太郎)

★掛軸もすっと真すぐに糸すすき/高橋句美子
床の間の掛け軸も真っすぐに下がり花瓶には糸ススキが活けてある。落ちつける和室です。 (祝恵子)

★背伸びして胸元に貼る赤い羽根/高橋秀之
自分で募金箱にお金を入れたのでしょうか。不自由な人、力の弱い人たちへの優しい気持ちを胸にしっかりと抱きしめる決心と子供らしい誇りが体現されています。 (小西 宏)

★秋晴れて風車の前の丘に立つ/祝恵子
秋晴れて天高しである。丘に立てば、なお、秋晴れて天高しである。晴れ晴れとして広々として、丘に立つ詠み手の姿が見えてくる。読み手も嬉しくなる。(高橋信之)

★豊作や新米どかと届けられ/河野啓一
中七の「新米どかと」はリアルな表現で、作者の喜びが読み手に強く伝わってくる。無駄な言葉のない一句である。(高橋信之)

★裏木戸へ弾けて真っ赤檀の実/佃 康水
こういうお庭があればなぁと思う景です。(祝恵子)

★葦の田の刈られて軽し水の音/小西 宏

【高橋正子特選/7句】
★野菊咲く道は遠くの山に向き/迫田和代
道の野菊の咲く道は、遠くの山に向かって伸びてゆく。遠くの山だからこそ、秋に向かう風情が感じられます。(高橋秀之)
遠くの山がすっきりと見わたせる道を通られたのでしょう。野菊の咲く道は空気も澄んで、秋らしい気持ちのよい情景が思われます。(小川和子)

★朝々に柿の色付き婚近し/藤田洋子
お子様のご結婚と言う慶びの日を間近に控えられ、色付いて来た柿の実を朝な朝なに眺めるにつけ嬉しくも有り寂しくも有り、親の複雑な心境がひしひしと伝わって参ります。(佃 康水)

★掛稲の穂垂れ軽々吹かれおり/柳原美知子
機械化されず稲架に掛けて天日で干される稲穂、風とともに軽やかにそよぐあり様が、いっそう収穫の喜びを感じさせてくれます。 (藤田洋子)

★虫の夜のただそれだけの住まいかな/下地鉄
きっと静かな夜をすごしておられるのでしょう。ただ、虫の音だけが聞こえてくる住まいで、ゆったりとした時間が流れていきます。(高橋秀之)

★朴の葉の白き葉裏の落ちて秋/桑本栄太郎
朴の大きな葉が裏返り、ぱさっと落ちたところに秋を感じたのがよい。(高橋正子)

★葦の田の刈られて軽し水の音/小西 宏
★掛軸もすっと真すぐに糸すすき/高橋句美子

【入選/5句】
★天空は風尽きるらし鱗雲/桑本栄太郎
空の果てまで続き、だんだん小さくなってゆく鱗雲を眺めているとそんな風にも思われますね。広やかな想像力に惹かれました。 (河野啓一)

★遠出の日高い空には鰯雲/迫田和代
鰯雲の広がる大空を見上げ、心も晴れ晴れと秋光に包まれての遠出。秋たけなわの自然をゆったりと満喫する喜びが伝わってきます。 (柳原美知子)

★何を見に秋天を飛ぶヘリコプター/矢野文彦
報道取材なのか、遊覧飛行なのか。高く澄んだ秋の空を飛ぶヘリコプターを見て、いろいろと思いをめぐらせる時間もいいものです。(高橋秀之)

★残る虫御苑の太き銀杏の根/古田敬二
御苑の散策でしょう、大銀杏の張り込んだ根っこ、佇めば虫の声も聞こえ、足元にはぎんなんが落ちているのやも。(祝恵子)

★秋高く上水瀬音響かせる/小川和子
東京地方では玉川上水、神田上水などという名前を子供の頃から聞いていました。今でも使われているのでしょうか。澄んだ秋空の下に流れる飲料水としての小さな川。清澄な響きです。 (小西 宏)

■選者詠/高橋信之
★秋高し柏手を打つ妻も打つ
豊穣の秋、天高く澄み渡った空の下で、二人そろって神に感謝する。われわれ日本人の肌に染みついた自然の恵みへの感謝の気持こころ。リズムよく詠まれまれた気持ちの良い御句です。(河野啓一)

★野葡萄の低きに垂れて実が優し
「野葡萄」がもつ野趣が一句を貫いていて、秋の深まりを感じます。(小川和子)

★空青く晴れきて白き杜鵑草

■選者詠/高橋正子
★竜胆の青透く峡の朝日差し
峡の中に咲いている秋らしい竜胆に朝日が差して輝いてる。青く透けて見えるのもいいですね。青い竜胆の色が目の前にちらつきます。(迫田和代)

★一碗の茶をいただけばきりぎりす
一椀のお茶の味。間遠に鳴くきりぎりす。忙中閑ありの上品な所作が偲ばれます。 (矢野文彦)

★関守石の露に濡たる縄の色

■互選高点句
●最高点(5点/同点3句)
★竜胆の青透く峡の朝日差し/高橋正子
★野菊咲く道は遠くの山に向き/迫田和代
★コスモスの高さに子らの見え隠れ/祝 恵子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

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