1月14日(火)

★水仙を活けしところに香が動く  正子
水仙の活けられてある静かな座敷。人のよぎる度に、あるいはちょっとした風の気配に、甘い香りが揺れ動き届いてくる。水仙のもつ高雅で安らかな香気。 (小西 宏)

○今日の俳句
枯原を高さ自由に熱気球/小西 宏
広い枯原の上に熱気球が、さまざまに浮いている。「高さ自由に」はのどかな景色で、夢がある。(高橋正子)

○寒椿

[乙女椿(寒中に咲く椿)/横浜日吉本町] [寒椿(山茶花との交雑種)/ネットより]

★竪にする古きまくらや寒椿 野坡
★折り取つて日向に赤し寒椿 水巴
★瀞の岩重なり映り寒椿 石鼎
★寒椿少しく紅を吐きにけり 青邨
★寒椿咲きたることの終りけり 風生
★寒椿落ちたるほかに塵もなし 悌二郎
★寒椿月の照る夜は葉に隠る 貞
★寒椿線香の鞘はしりける 茅舎
★ことごとに人待つ心寒椿 汀女
★くれなゐのまつたき花の寒椿 草城
★何といふ赤さ小ささ寒椿 立子
★寒椿けふもの書けて命延ぶ 林火
★園丁の昼煙草寒椿かな/村山古郷
★寒椿落ちたるほかに塵もなし/篠田悌二郎

★寒椿というや雪の公園に/高橋正子

寒椿は、広辞苑によれば、(1)寒中に咲く椿と(2)ツバキ科の常緑中低木とに分けられている。(1)寒中に咲く椿は、乙女椿(おとめつばき)・大神楽(だいかぐら)・侘助(わびすけ)などであり、(2)ツバキ科の常緑中低木は、椿と山茶花の交雑種とされるツバキ目ツバキ科ツバキ属のひとつの「寒椿」である。ツバキ目ツバキ科ツバキ属の「寒椿」は、「山茶花」との区別が難しく、低木で枝と葉に毛がある。花は紅色の八重咲きで、やや小さく、11月~1月頃開花する。

◇生活する花たち「獅子頭(寒椿)・藤冬芽・老鴉柿(ロウヤガキ)」(東京・小石川植物園)

1月14日

●小口泰與
天碧く雪の赤城や街は風★★★
しわしわの土に朝日や寒烏★★★★
山風に言葉奪われ探梅行★★★

●井上治代
ちぎり絵の紫清し冬菫★★★★
冬菫は、花のすくない真冬にもで花を咲かせてくれる。ちぎり絵にされた冬菫の紫は、この季節「清し」というにふさわしい。季節がそう感じさせてくれる。(高橋正子)

冬日和寡黙な夫と農作業★★★
臘八會父の忌日の近づきぬ★★★

●桑本栄太郎
大学の赤き煉瓦や寒の晴れ★★★★
寒晴れの真っ青な空に、大学の煉瓦の赤が印象的だ。寒の晴れの下で学問の厳しさと大学の権威が今も感じられる赤煉瓦だ。(高橋正子)

廃屋の捺染工場や枇杷の花★★★
剪定の切り口晒し寒波来る★★★

●多田有花
はるばると遠くに寒九の海光る★★★★
寒に入って九日目、寒さも極まってきた。遠く眺める海の光り具合も寒九の光なのだ。(高橋正子)

頂にひと山向こうの雪を見る★★★
まっすぐな霜の道ゆくセーラー服★★★

●小西 宏
枯芝の日向に白き月見上ぐ★★★
冬枯の小山に赤き陽の残り★★★
枯枝に月彷徨える雲明かり★★★