5月11日(土)

小口泰與
D五一の蒸気硬しや夏の草★★★★
D五一も限られたところでしか走っていないが、蒸気機関車というのは、人間的な魅力のある機関車だ。「蒸気硬し」がこの句の面白さだが、慎重に蒸気を吐き出し、夏草の伸び始めた線路を走っている景を想像する。夏草がさほど茂っていない故の「蒸気硬し」だろう。(高橋正子)

石楠花や男体山の冷気みつ★★★
蛇の髭の花やひそっと田に居りぬ★★★

黒谷光子
豌豆の筋とる雨音聞きながら★★★
雨降って庭は緑を滴らす★★★
五月雨のひと日静かに暮れてゆく★★★

河野啓一
花蜜柑白き香りのとき想う★★★
庭の薔薇咲いて姿の美しき★★★
日ごと摘む庭の大きなサラダ菜を★★★

桑本栄太郎
延々とつづく鉄路の酸葉かな★★★★
銀色の丘となりけり茅花咲く★★★
さみどりの陽射し透き居り窓若葉★★★

多田有花
朝の雨高く咲きおり桐の花★★★
大橋はすっぽり初夏の霧の中★★★
須磨海岸夏のはじめの波寄せる★★★

5月11日(土)

★ビルの窓全てで五月の空なせり  正子
ビルの窓「全て」に映りだされた明るく輝く五月の空。ビル一面に新たに生みだされた五月の空の新鮮な感動が伝わり、いっそう清々しく美しい五月の空を感じさせてくれます。 (藤田洋子)

○今日の俳句
若葉風自転車きらり輪が廻る/藤田洋子
若葉風に吹かれ、自転車の銀輪がきらりと輝いて廻る。初夏の解放感と若々しさの溢れた句。(高橋正子)

○睡蓮

[睡蓮/横浜都筑・ふじやとのみち] 

★睡蓮の花沈み今日のこと終へず/臼田亜浪
★睡蓮に日影とて見ぬ尼一人/飯田蛇笏
★睡蓮や鬢に手をあてて水鏡/杉田久女
★睡蓮の明暗たつきのピアノ打つ/中村草田男
★睡蓮に雨意あり胸の釦嵌む/中村草田男
★睡蓮の汀に睫長き子よ/星野立子
★睡蓮やまづ暮のいろ石にあり/加藤楸邨
★睡蓮のひかりを絵の具盛り描く/宮津昭彦

睡蓮(学名:Nymphaea)は、スイレン目スイレン属の植物の一つで、水生多年草。単にスイレン(睡蓮)と呼ぶことが多い。日本にはヒツジグサ(未草)の1種類のみ自生する。日本全国の池や沼に広く分布している。白い花を午後、未の刻ごろに咲かせる事からその名が付いたと言われる。水位が安定している池などに生息し、地下茎から長い茎を伸ばし、水面に葉や花を浮かべる。葉は円形から広楕円形で円の中心付近に葉柄が着き、その部分に深い切れ込みが入る。葉の表面に強い撥水性はない。多くの植物では気孔は葉の裏側にあるが、スイレンでは葉の表側に分布する。根茎から直接伸びる花柄の先端に直径5-10cmほどの花をつける。産地で大まかに分けると、熱帯産と温帯産に分けられる。温帯産は水面のすぐ上に花を付けるが、熱帯産は水面から高く突き出た茎の先端に花をつけるので、区別は容易である。また、熱帯産には夜や早朝にしか花を咲かせない種もある。

○生活する花たち「西洋おだまき・卯の花・錦木の花」(東京深川・芭蕉記念館とその近辺)