今日の秀句/11月11日~11月20日
★故郷の土間に置かれし茎の桶/廣田洋一
11月11日~11月20日
目陰して浅間の雪を確かめし★★★
我が声の岩を射落とし神渡し★★★
多田有花
実南天色を深める街角に★★★
冬浅し醤油饅頭売る老舗★★★
カリカリと種の干乾び末枯るる★★★
黄をかざし日蔭なればや石蕗の花★★★★
初雪を獣の足あと知らせけり★★★★
湖の浪打つ巌白き鳥★★★
曲がごとのうつつに覚めし隙間風★★★
目陰して冬の浅間を確かめし★★★
廣田洋一
緑濃きセーターを着て外出す★★★
マフラーを二重に巻きて顎埋まる★★★
多田有花
時雨あがる醤油蔵の煉瓦煙突★★★★
冬菊に小さき蕾数多あり★★★
桑本栄太郎
鼻ふさぎ横向きにゆく冬一番★★★
終活の頃となりたる落葉散る★★★
水中よりすいっと抜ける冬翡翠★★★
ほろほろと枯葉舞い落つ池の朝★★★
多田有花
初冬の松どっしりと龍野城★★★★
発酵ランチ食べに入れば初しぐれ★★★
日を透きて火炎と想う冬もみじ★★★
散り積もる葉を吹き飛ばす冬一番★★★
冬ばらの燃え立つ赤の焔かな★★★
沼廻る冬翡翠の羽音かな★★★
多田有花
冬浅き紅葉始まる聚遠亭★★★
ちらほらと御涼所の冬紅葉★★★
廣田洋一
綿虫や払いてもまた目の前に★★★
山茶花や大きな墓のひとところ★★★
桑本栄太郎
背ナに京車夫の街ゆく冬うらら★★★
せせらぎの落葉散り敷く高瀬川(原句)
外つ人のベビーカー押し冬の京
駅出でて時雨に濡れし上野かな★★★★
大綿のひとかたまりに飛び来たる★★★
小口泰與
行くほどにすそ野の長し冬赤城★★★
目の前の長きすそ野や小春空★★★
桑本栄太郎
嶺の端を超えて里へとしぐれ雲★★★
冷えまさる曇り空なる村しぐれ★★★
多田有花
くっきりと入日が照らす冬紅葉★★★★
柿の実の枝に残れる十一月★★★
診察を終えれば夕暮れ日短か★★★
帰路につく冬の紅葉仰ぎつつ★★★
小口泰與
空風に慣れるも仕事嫁ぎ人★★★
鳰のいて葦のまにまにに顔さらす★★★★
桑本栄太郎
くもりても更に明るき銀杏黄葉★★★
北山のくもり来たるや一ト時雨★★★
廣田洋一
その奥に楸邨の墓帰り花★★★
寒禽の鳴き移りたる法の庭★★★
産土の社に一樹冬紅葉★★★
松の色変わらず冴えて十一月★★★
小口泰與
初冬の水面賑わす水輪かな★★★
山の沼冬翡翠の水輪かな★★★
多田有花
滑り台何度も滑り冬ぬくし★★★
白菜を刻み味噌汁に入れる★★★
冬蝶の躊躇い舞いぬ日向かな★★★
ゑのころの枯れて群れ居り街の墓地★★★
沁み渡る沼へ朝日や冬の鯉★★★
風も無き沼へ枯葉の限りなし★★★
多田有花
路地を曲がれば冬の小菊かな★★★
大公孫樹色づき染めし冬はじめ★★★
冬薔薇一つちょこんと丸まりて★★★
丹沢の稜線すらり山眠る★★★★
桑本栄太郎
日に向い塀より出ずる石蕗の花★★★
オカリナのようには鳴らずひょんの笛★★★★
鳥声や上つ枝の熟柿風の中★★★
魚跳ねし秋翡翠の沼ほとり★★★
多田有花
百葉箱冬の紅葉をしたがえて★★★
校庭にコスモス揺れて冬浅し★★★
あおぞらに雲見当たらぬ小春かな★★★★
冬蜂と云えど日差しの目の前に★★★
廣田洋一
故郷の土間に置かれし茎の桶★★★★
十一月友はコロナに罹患せり★★★
渓流の波のほぐれし秋日和
紅葉の妙義に登り浅間観る
多田有花
冬浅き真昼の土手を歩きけり★★★
冬の薔薇庭の手入れの鋏音★★★★
桑本栄太郎
カサコソと枯葉競いぬ坂の風★★★
亜浪忌のかつら黄葉の散り敷きぬ★★★
廣田洋一
まだまだ色付き足らぬ冬紅葉★★★
法輪の煌めく塔や冬紅葉★★★
■11月月例ネット句会/入賞発表■
2024年11月11日
【金賞】
16.水脈競い秋青海へ漁の船/吉田 晃
漁に向かう船は二艘か、あるいは、もっとか。舳先を沖へ向けて出てゆく。船の水脈がどんどん作られて、水脈が競争しているように見える。秋海は青く,潮の匂いがしてきそう。出漁の漁船の勢いのある姿である。(髙橋正子)
【銀賞/2句】
21.山気浴び手綱をつける秋の馬/柳原美知子
馬肥える秋である。山の乗馬場か。清涼な山の空気を浴びて、馬が手綱をつけている。馬の体もつやつや光ってたくましい。また静かさもあって、馬の存在感大である。(髙橋正子)
36.あの黄色石蕗の花に違いなく/多田有花
枯が進む中で、石蕗の花の黄色は目立つ。その黄色は、澄んでいて、力強い。遠くから、まだよくわからないところからも、黄色を見つけ、石蕗の花と確信する。(髙橋正子)
【銅賞/3句】
18.薄青の空暖かな窓の冬/吉田晃
窓から見える穏やかな冬の日が快く詠まれている。部屋の窓からの眺めは毎日の眺めであるが、天気により、また気持ちの持ちようにより、日々変わる眺めでもある。(髙橋正子)
26.リツトウの響きの通り冬来る/川名ますみ
「リツトウ」とカタカナで書いてあるのは、音に出して言うためであろう。「リットウ」と言葉に出して言ってみると、力強く、きっぱりとした音に聞き取れる。ピアニストの作者であるだけに、音で冬の到来をとらえた鋭敏な句と思う。(髙橋正子)
32.朝が来て富士山頂の初冠雪/髙橋句美子
朝が来て、富士山を見ると初冠雪の姿が見えた。富士山が見えるところに住むと、富士山は日々、自然と心の中心的な山になっている。初冠雪は新しい季節の到来を示し、嬉しいものである。新鮮な句。(髙橋正子)
【髙橋正子特選/7句】
16.水脈競い秋青海へ漁の船/吉田晃
秋晴れの青い海に真っ白い水脈が長く短く輝く美しい景色が目に浮かび、漁師達の力強い声が聞こえてきそうです。(柳原美知子)
23.栗菓子や特急列車の並び席/高橋秀之
おそらく遠くまで行くのでしょう。特急列車の並び席で広げられた栗菓子が、甘い匂いときれいな形を見せています。いかにも楽しそうな、秋の旅が浮かび、わくわくします。 (川名ますみ)
32.朝が来て富士山頂の初冠雪/髙橋句美子
今年の秋は残暑の期間が長く、冬は本当にやってくるのだろうか?と思って居た作者です。とある朝になり、漸く富士山の初冠雪を眺めました。例年より」一ヶ月遅れとは言え、少し安堵の作者です。(桑本栄太郎)
18.薄青の空暖かな窓の冬/吉田晃
19.谷水の音に紛れずちちろ鳴く/柳原美知子
26.リツトウの響きの通り冬来る/川名ますみ
36.あの黄色石蕗の花に違いなく/多田有花
【髙橋句美子特選/7句】
03.毬栗の落ちたる先の子犬かな/小口泰與
毬栗や子犬の様子が浮かぶ動きのある句です。 (髙橋句美子)
05.柿すだれ峡の村なる母のさと/桑本栄太郎
桑本さまの故郷は確か山陰でしたね。昔ながらの日本の「ふるさと」がまだそこにたっぷり残っている気がします。 (多田有花)
15.水替える黄菊のつんと匂うなり/髙橋正子
花瓶の水を代える時、菊に手を伸ばすと、部屋の中に広がっていた匂いではなく、「つん」とした匂いが鼻孔をつつく。菊の花の強い香に、改めて小さく驚いている作者なのだろう。 (吉田晃)
21.山気浴び手綱をつける秋の馬/柳原美知子
秋が深まり、乗馬に最適の季節になってきました。「山気浴び」という言葉が澄んだ空気の空の高さを思わせます。 (多田有花)
22.風に舞う落ち葉の先に青き空/高橋秀之
都会でも街路樹が色づき、落葉を開始して季節の移り変わりを知らせてくれます。マフラーに首をうずめた人が行き交う季節も間もなくです。 (多田有花)
27.濠に三つ小さき輪を生む小さき鴨/川名ますみ
マガモでしょうか。北の大地からはるばるやってきた冬の使者。濠に落ち着いて小さな水輪を生み出しています。 (多田有花)
36.あの黄色石蕗の花に違いなく/多田有花
【入選/8句】
01.古き山古き河川に秋の月/小口泰與
山川も月もすべて何億年、何十億年という歳月の中に会って常に新鮮です。縄文人もここにいて、月を見上げただろうなあなどと思います。 (多田有花)
07.背に肩に紅葉散りたる古き寺/廣田洋一
「背に肩に」という表現で紅葉が散る光景の臨場感が伝わってきました。古いお寺と言う場所も相まって、晩秋の寂しさと風情ある雰囲気を感じました。 (西村友宏)
12.小春日や新チーム白きユニホーム/上島祥子
パッと思い浮かんだのがサッカーのユニホームでした。(子どもたちは学生時代サッカーしていたもので)小春日の新チーム結成、真新しいユニホームは、どの競技でも新鮮ですね。 (高橋秀之)
17.玄関を出る靴音の軽い秋/吉田 晃
颯爽とお出かけになる姿が思い浮かびます。ありふれた日常の中に感謝と嬉しさを感じさせる一句だと思いました。 (上島祥子)
28.皮むけば房がふっくら紅みかん/ 西村友宏
先日、木からもぎとって蜜柑を食べました。さっきまで太陽に照らされていた房にはほんのり温みが残っていました。「ふっくら」に蜜柑の甘さと美味しさが詰め込まれていますね。 (多田有花)
30.取れたての柿の冷たさ朝の風/西村友宏
庭に柿があるのでしょうか。朝晩は冷えるようになりました。柿の実の冷たさにその寒さを感じる。そんな朝の様子がうかがえます.。 (高橋秀之)
朝の冷たい風の中に今年も沢山の柿が豊作を知らせてくれている。その柿を一つとってみると冷風を浴びた柿の冷たさが伝わってくる。さぞかしおいしい柿だろうと楽しみにしている作者の顔が浮かんでくる。(小口泰與)
35.草むらを小春日和のてんとう虫/多田有花
草むらの中を歩くてんとう虫に小春日和の優しい日差しが差しこむ、穏やかな秋を感じました。 (高橋秀之)
34.凩の中をゆくなり郵便夫/多田有花
四季を通じて、どんな悪天候の中でも、山奥でも辛抱強く一軒一軒貴重な配達をしてくれる郵便夫さん。これからの季節、凩の中をゆく郵便夫への感謝と安全を祈る気持ちに共感を覚えます。(柳原美知子)
■選者詠/髙橋正子
15.水替える黄菊のつんと匂うなり
花瓶の水を代える時、菊に手を伸ばすと、部屋の中に広がっていた匂いではなく、「つん」とした匂いが鼻孔をつつく。菊の花の強い香に、改めて小さく驚いている作者なのだろう。 (吉田晃)
13.初鴨の数をかぞえて座りおり
冬の到来を告げてくれる初鴨。今日は何羽いるのか数えながら、楽し気な泳ぎを眺める小春日和の心安らぐひと時です。(柳原美知子)
14.夕鵙のキチキチキチキチ長鳴けり
■選者詠/髙橋句美子
31.湯豆腐に薬味きりりと夜深し
夜が更けてから湯豆腐を食べた。疲れを取るために、辛いか酸っぱいか濃い味を付ける為に薬味をたっぷり使った様子が良く見える。薬味きりりとが良い。 (廣田洋一)
32.朝が来て富士山頂の初冠雪
今年の秋は残暑の期間が長く、冬は本当にやってくるのだろうか?と思って居た作者です。とある朝になり、漸く富士山の初冠雪を眺めました。例年より」一ヶ月遅れとは言え、少し安堵の作者です。(桑本栄太郎)
33.小春日にパンケーキ焼け夫を呼ぶ
「小春日」「パンケーキ」が暖かい雰囲気で、焼き上がりが満足のいくものであったことがうかがえます。さあいただこう、とご主人を呼ばれた声の弾み具合も伝わってきます。(多田有花)
●互選最高点句(5点)
15.水替える黄菊のつんと匂うなり/髙橋正子
集計:髙橋正子
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