自由な投句箱/11月11日~11月20日

※当季雑詠3句(秋の句・冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。 

         🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂
      今日の俳句『現代俳句一日一句鑑賞』(髙橋正子著)より
  名前の右端に🌸の印が付いている句は、(現)または(元)花冠会員の句
     名前の右端に🍁の印が付いている句は、花冠に縁の深い方の句
11月20日
★足袋裏を向けおうて炬燵の親子かな   臼田 亞浪(うすだ あろう)🍁
11月19日
★蔦枯れて一身かんじがらみなり     三橋 鷹女(みつはし たかじょ)
11月18日
★大き落葉すこしづつ地を吹かれ進む   川本 臥風(かわもと がふう)🍁
11月17日
★ゆらぎつつ澄みつつ冬の泉湧く     吉田  晃(よしだ あきら)🌸
11月16日
★自転車の籠に立ちたる葱の白      碇   英一(いかり えいいち)🌸
11月15日
★干し柿を移す朝日の来る方へ      古田 けいじ(ふるた けいじ)🌸
11月14日
★妻病みて籠の大根の重かりし      前田 たかし(まえだ たかし)🌸
11月13日
★冬晴れを愛す厠の窓からも       谷野 予志(たにの よし)
11月12日
★月白やふわりと跳べるトウシューズ   石井 秀子(いしい ひでこ)🌸
11月11日
  亞浪先生逝去
★この冬空の下どこにも先生亡し     川本 臥風(かわもと がふう)🍁

今日の秀句/11月11日~11月20日

11月20日(1句)
黄をかざし日蔭なればや石蕗の花/桑本栄太郎
「日蔭なればや」は、「日蔭であるからこそ」の意味。石蕗の花の黄色は枯れの進む冬景色のなかで特に目を引く黄色であるが、日蔭では特に石蕗の花の風情がいい、と言うのだ。(髙橋正子)
11月19日(1句)

★夜明前寒気放てる星一つ/廣田洋一
冬の夜明け前の美しさの極みが「寒気放てる星一つ」で表現されている。遠い星を見て「寒気放てる」の実感が伝わる。(髙橋正子)
11月18日(1句)

★初冬の松どっしりと龍野城/多田有花
松は一年中色を変えないように思えるが、やはり、季節ごとの趣は違っている。初冬の松、寒さに向けて気構えが感じられる。色も緑を少し失い、古風な感じが、龍野城を趣ある城に仕立てている。(髙橋正子)

11月17日(1句)
活発な冬翡翠や湖眠る/小口泰與(原句)
泰與さんはアマチュア写真家としてご活躍ですが、俳句と写真は似ているようでん、違うところがあります。原句は、光景が静止していて、翡翠の動きが感じられません。冬も活発な翡翠を表現するには、添削のようにするとよいと思います。
湖眠る冬翡翠の活発に/小口泰與(正子添削)
11月16日(4名)

★駅出でて時雨に濡れし上野かな/廣田洋一
時雨が降る時分の上野駅の風情がよく出ている。昭和的な雰囲気がまだ残る上野である。(髙橋正子)

★冬虹の程なく消える山の池/小口泰與
山の池の上の生まれた冬の虹は、「程なく」消えた。虹は儚いというけれど名残りを惜しむように「程なく」消えたのである。ここに作者の心情が読み取れる。(髙橋正子)
11月15日(1句)

★鳰のいて葦のまにまにに顔さらす/小口泰與
鳰は水に潜っては、潜ったところから離れて浮き出る。潜水の名手と言っていい。脚が体の後ろの方についていて、櫂の役目を果たすという。葦の間に間に浮いて顔をさらしているところは画になるのだろう。(髙橋正子)
11月14日(2句)

★冬紅葉映せる川面平らかに/廣田洋一
冬紅葉が色を極めるころ、静寂な時間が訪れる。川面は平らかに、冬紅葉を映して、時を止めているかのようである。(髙橋正子)

★白き実を鴉ついばむ冬初め/桑本栄太郎
「白き実」で思い出すのは、ナンキンハゼの実だが、そうなのか、どうか。「白い実」の白と「鴉」の黒の印象が、「冬初め」の気候に印象に合っている。(髙橋正子)
11月13日(1句)

★オカリナのようには鳴らずひょんの笛/桑本栄太郎
「ひょんの笛」をご存じだろうか。句会仲間に旧家の人がいて、庭の木のひょんの笛をもってきて見せてくれた。
イスノキの葉っぱにある種のアブラムシが卵を産み付け、葉が丸く固く木のように変形し、その中に幼虫が育ち、抜け出たあとに穴があく。これが木の上で風に吹かれると「ひょう」と言う音を出す。

穴に息を入れ吹くと笛のような音がでるので、江戸時代から子供のおもちゃになったようだ。オカリナに似た音だが、オカリナを吹くようにはいかない。音は面白くも淋しくもある。(髙橋正子)
11月12日(1句)

★故郷の土間に置かれし茎の桶/廣田洋一
「茎の桶」は、茎漬をする桶のことで、茎漬は、大根や蕪の葉や茎に塩を振り重石をのせて数日すると発酵した少し酸味のある漬物のこと。冬の間の食事には欠かせない、楽しみな漬物である。それが故郷の土間に置かれている。故郷の冬の生活を懐かしんだのであろう。(髙橋正子)
11月11日(1句)

★冬の薔薇庭の手入れの鋏音/多田有花
「薔薇」と「鋏音」の取り合わせに快感がある。鋏音からは冷たい鉄の出す小さい音、薔薇からは寒さに耐えながら、美しさを保とうとする姿がイメージできる。(髙橋正子)

11月11日~11月20日

11月20日(4名)

小口泰與
寒波来ぬ上州見事晴渡り★★★★
目陰して浅間の雪を確かめし★★★
我が声の岩を射落とし神渡し★★★

多田有花
初冬の玄関に白筋アマリリス★★★
実南天色を深める街角に★★★
冬浅し醤油饅頭売る老舗★★★

桑本栄太郎
朝の日に綿虫浮かぶ散歩かな★★★
カリカリと種の干乾び末枯るる★★★
黄をかざし日蔭なればや石蕗の花★★★★ 

弓削和人
窓硝子せんべい汁の湯気の粒★★★★
初雪を獣の足あと知らせけり★★★★
湖の浪打つ巌白き鳥★★★
 
11月19日(4名)
小口泰與
冬翡翠の煩悩此処に在りしかな★★★
曲がごとのうつつに覚めし隙間風★★★
目陰して冬の浅間を確かめし★★★

廣田洋一
夜明前寒気放てる星一つ★★★★
緑濃きセーターを着て外出す★★★
マフラーを二重に巻きて顎埋まる★★★

多田有花
しぐれおる龍野に醤油ソフト食ぶ★★★
時雨あがる醤油蔵の煉瓦煙突★★★★
冬菊に小さき蕾数多あり★★★

桑本栄太郎
木枯や水色空のせまり来る★★★★
鼻ふさぎ横向きにゆく冬一番★★★
終活の頃となりたる落葉散る★★★
11月18日(3名)
小口泰與
仲間らに寒波来ること仄めかす★★★
水中よりすいっと抜ける冬翡翠★★★
ほろほろと枯葉舞い落つ池の朝★★★

多田有花
冬霧を眼下に見るか朝霞城★★★
初冬の松どっしりと龍野城★★★★
発酵ランチ食べに入れば初しぐれ★★★
桑本栄太郎
木枯やしがみつきたるフレディ君★★★
日を透きて火炎と想う冬もみじ★★★
散り積もる葉を吹き飛ばす冬一番★★★
11月17日(4名)
小口泰與
活発な冬翡翠や湖眠る(原句)
泰與さんはアマチュア写真家としてご活躍ですが、俳句と写真は似ているようでん、違うところがあります。原句は、光景が静止していて、翡翠の動きが感じられません。冬も活発な翡翠を表現するには、添削のようにするとよいと思います。
湖眠る冬翡翠の活発に(正子添削)

冬ばらの燃え立つ赤の焔かな★★★
沼廻る冬翡翠の羽音かな★★★

多田有花
冬紅葉見あげ龍野神社へと★★★
冬浅き紅葉始まる聚遠亭★★★
ちらほらと御涼所の冬紅葉★★★

廣田洋一
一茶忌や難民保護の募金箱★★★
綿虫や払いてもまた目の前に★★★
山茶花や大きな墓のひとところ★★★

桑本栄太郎
 <京都四条大橋界隈>
背ナに京車夫の街ゆく冬うらら★★★
せせらぎの落葉散り敷く高瀬川(原句)
せせらぎに落葉散り敷く高瀬川(正子添削)
外つ人のベビーカー押し冬の京
11月16日(4名)
廣田洋一
日当たり良き庭につつじの帰り花★★★
駅出でて時雨に濡れし上野かな★★★★
大綿のひとかたまりに飛び来たる★★★

小口泰與
冬虹の程なく消える山の池★★★★
行くほどにすそ野の長し冬赤城★★★
目の前の長きすそ野や小春空★★★

桑本栄太郎
朝しぐれ峰の彼方の日差しけり★★★
嶺の端を超えて里へとしぐれ雲★★★
冷えまさる曇り空なる村しぐれ★★★

多田有花
冬はじめ銀杏色づく大阪に★★★
くっきりと入日が照らす冬紅葉★★★★
柿の実の枝に残れる十一月★★★
「柿の実の枝に残れる」は季語「十一月」を説明した形になっています。これは季語の使い方として避けるのが良いと思います。(髙橋正子)
11月15日(4名)
多田有花
塩を振り南瓜の種を炒る初冬★★★
診察を終えれば夕暮れ日短か★★★
帰路につく冬の紅葉仰ぎつつ★★★

小口泰與
銀鱗を光らす沼や冬木立★★★
空風に慣れるも仕事嫁ぎ人★★★
鳰のいて葦のまにまにに顔さらす★★★★

桑本栄太郎
三階の眼前はかつら黄葉かな★★★
くもりても更に明るき銀杏黄葉★★★
北山のくもり来たるや一ト時雨★★★

廣田洋一
新堂の赤銅光る十一月★★★
その奥に楸邨の墓帰り花★★★
寒禽の鳴き移りたる法の庭★★★
11月14日(4名)

廣田洋一
冬紅葉映せる川面平らかに★★★★
産土の社に一樹冬紅葉★★★
松の色変わらず冴えて十一月★★★

小口泰與
大鷹や葦に逃げ込む鳥一羽★★★
初冬の水面賑わす水輪かな★★★
山の沼冬翡翠の水輪かな★★★

多田有花
もぎたての蜜柑に残る陽の温み★★★
滑り台何度も滑り冬ぬくし★★★
白菜を刻み味噌汁に入れる★★★

桑本栄太郎
白き実を鴉ついばむ冬初め★★★★
冬蝶の躊躇い舞いぬ日向かな★★★
ゑのころの枯れて群れ居り街の墓地★★★
11月13日(4名)
小口泰與
寒暁の沼や水音絶え間なし★★★
沁み渡る沼へ朝日や冬の鯉★★★
風も無き沼へ枯葉の限りなし★★★

多田有花
おはようの看板初冬の小学校★★★
路地を曲がれば冬の小菊かな★★★
大公孫樹色づき染めし冬はじめ★★★
廣田洋一
そこはかと甘き香りや冬薔薇★★★
冬薔薇一つちょこんと丸まりて★★★
丹沢の稜線すらり山眠る★★★★

桑本栄太郎
落葉して緋色極むる唐かえで★★★
日に向い塀より出ずる石蕗の花★★★
オカリナのようには鳴らずひょんの笛★★★★
11月12日(4名)
小口泰與
山の幸干して秋風ほしいまま★★★
鳥声や上つ枝の熟柿風の中★★★
魚跳ねし秋翡翠の沼ほとり★★★

多田有花
小六月土手に咲きおり姫女苑★★★
百葉箱冬の紅葉をしたがえて★★★
校庭にコスモス揺れて冬浅し★★★

桑本栄太郎
白き実を鴉ついばみ冬晴るる★★★
あおぞらに雲見当たらぬ小春かな★★★★
冬蜂と云えど日差しの目の前に★★★

廣田洋一
点々と燃えたつ如く冬紅葉★★★
故郷の土間に置かれし茎の桶★★★★
十一月友はコロナに罹患せり★★★

11月11日(4名)
小口泰與
早朝の秋翡翠の狩猟かな
渓流の波のほぐれし秋日和
紅葉の妙義に登り浅間観る

多田有花
小春日の鳶ゆっくりと旋回す★★★
冬浅き真昼の土手を歩きけり★★★
冬の薔薇庭の手入れの鋏音★★★★

桑本栄太郎
あおぞらに柚子の色づく狭庭かな★★★
カサコソと枯葉競いぬ坂の風★★★
亜浪忌のかつら黄葉の散り敷きぬ★★★

廣田洋一
街中をライトアップや十一月★★★
まだまだ色付き足らぬ冬紅葉★★★
法輪の煌めく塔や冬紅葉★★★

■11月月例ネット句会/入賞発表■

■11月月例ネット句会/入賞発表■
2024年11月11日

【金賞】
16.水脈競い秋青海へ漁の船/吉田 晃
漁に向かう船は二艘か、あるいは、もっとか。舳先を沖へ向けて出てゆく。船の水脈がどんどん作られて、水脈が競争しているように見える。秋海は青く,潮の匂いがしてきそう。出漁の漁船の勢いのある姿である。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
21.山気浴び手綱をつける秋の馬/柳原美知子
馬肥える秋である。山の乗馬場か。清涼な山の空気を浴びて、馬が手綱をつけている。馬の体もつやつや光ってたくましい。また静かさもあって、馬の存在感大である。(髙橋正子)

36.あの黄色石蕗の花に違いなく/多田有花
枯が進む中で、石蕗の花の黄色は目立つ。その黄色は、澄んでいて、力強い。遠くから、まだよくわからないところからも、黄色を見つけ、石蕗の花と確信する。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
18.薄青の空暖かな窓の冬/吉田晃
窓から見える穏やかな冬の日が快く詠まれている。部屋の窓からの眺めは毎日の眺めであるが、天気により、また気持ちの持ちようにより、日々変わる眺めでもある。(髙橋正子)

26.リツトウの響きの通り冬来る/川名ますみ
「リツトウ」とカタカナで書いてあるのは、音に出して言うためであろう。「リットウ」と言葉に出して言ってみると、力強く、きっぱりとした音に聞き取れる。ピアニストの作者であるだけに、音で冬の到来をとらえた鋭敏な句と思う。(髙橋正子)

32.朝が来て富士山頂の初冠雪/髙橋句美子
朝が来て、富士山を見ると初冠雪の姿が見えた。富士山が見えるところに住むと、富士山は日々、自然と心の中心的な山になっている。初冠雪は新しい季節の到来を示し、嬉しいものである。新鮮な句。(髙橋正子)

【髙橋正子特選/7句】
16.水脈競い秋青海へ漁の船/吉田晃
秋晴れの青い海に真っ白い水脈が長く短く輝く美しい景色が目に浮かび、漁師達の力強い声が聞こえてきそうです。(柳原美知子)

23.栗菓子や特急列車の並び席/高橋秀之
おそらく遠くまで行くのでしょう。特急列車の並び席で広げられた栗菓子が、甘い匂いときれいな形を見せています。いかにも楽しそうな、秋の旅が浮かび、わくわくします。 (川名ますみ)

32.朝が来て富士山頂の初冠雪/髙橋句美子
今年の秋は残暑の期間が長く、冬は本当にやってくるのだろうか?と思って居た作者です。とある朝になり、漸く富士山の初冠雪を眺めました。例年より」一ヶ月遅れとは言え、少し安堵の作者です。(桑本栄太郎)

18.薄青の空暖かな窓の冬/吉田晃
19.谷水の音に紛れずちちろ鳴く/柳原美知子
26.リツトウの響きの通り冬来る/川名ますみ
36.あの黄色石蕗の花に違いなく/多田有花

【髙橋句美子特選/7句】
03.毬栗の落ちたる先の子犬かな/小口泰與
毬栗や子犬の様子が浮かぶ動きのある句です。 (髙橋句美子)

05.柿すだれ峡の村なる母のさと/桑本栄太郎
桑本さまの故郷は確か山陰でしたね。昔ながらの日本の「ふるさと」がまだそこにたっぷり残っている気がします。 (多田有花)

15.水替える黄菊のつんと匂うなり/髙橋正子
花瓶の水を代える時、菊に手を伸ばすと、部屋の中に広がっていた匂いではなく、「つん」とした匂いが鼻孔をつつく。菊の花の強い香に、改めて小さく驚いている作者なのだろう。 (吉田晃)


21.山気浴び手綱をつける秋の馬/柳原美知子
秋が深まり、乗馬に最適の季節になってきました。「山気浴び」という言葉が澄んだ空気の空の高さを思わせます。 (多田有花)

22.風に舞う落ち葉の先に青き空/高橋秀之
都会でも街路樹が色づき、落葉を開始して季節の移り変わりを知らせてくれます。マフラーに首をうずめた人が行き交う季節も間もなくです。 (多田有花)

27.濠に三つ小さき輪を生む小さき鴨/川名ますみ
マガモでしょうか。北の大地からはるばるやってきた冬の使者。濠に落ち着いて小さな水輪を生み出しています。 (多田有花)


36.あの黄色石蕗の花に違いなく/多田有花

【入選/8句】
01.古き山古き河川に秋の月/小口泰與
山川も月もすべて何億年、何十億年という歳月の中に会って常に新鮮です。縄文人もここにいて、月を見上げただろうなあなどと思います。 (多田有花)

07.背に肩に紅葉散りたる古き寺/廣田洋一
「背に肩に」という表現で紅葉が散る光景の臨場感が伝わってきました。古いお寺と言う場所も相まって、晩秋の寂しさと風情ある雰囲気を感じました。 (西村友宏)

12.小春日や新チーム白きユニホーム/上島祥子
パッと思い浮かんだのがサッカーのユニホームでした。(子どもたちは学生時代サッカーしていたもので)小春日の新チーム結成、真新しいユニホームは、どの競技でも新鮮ですね。 (高橋秀之)

17.玄関を出る靴音の軽い秋/吉田 晃
颯爽とお出かけになる姿が思い浮かびます。ありふれた日常の中に感謝と嬉しさを感じさせる一句だと思いました。 (上島祥子)

28.皮むけば房がふっくら紅みかん/ 西村友宏
先日、木からもぎとって蜜柑を食べました。さっきまで太陽に照らされていた房にはほんのり温みが残っていました。「ふっくら」に蜜柑の甘さと美味しさが詰め込まれていますね。 (多田有花)

30.取れたての柿の冷たさ朝の風/西村友宏
庭に柿があるのでしょうか。朝晩は冷えるようになりました。柿の実の冷たさにその寒さを感じる。そんな朝の様子がうかがえます.。 (高橋秀之)
朝の冷たい風の中に今年も沢山の柿が豊作を知らせてくれている。その柿を一つとってみると冷風を浴びた柿の冷たさが伝わってくる。さぞかしおいしい柿だろうと楽しみにしている作者の顔が浮かんでくる。(小口泰與)

35.草むらを小春日和のてんとう虫/多田有花
草むらの中を歩くてんとう虫に小春日和の優しい日差しが差しこむ、穏やかな秋を感じました。 (高橋秀之)

34.凩の中をゆくなり郵便夫/多田有花
四季を通じて、どんな悪天候の中でも、山奥でも辛抱強く一軒一軒貴重な配達をしてくれる郵便夫さん。これからの季節、凩の中をゆく郵便夫への感謝と安全を祈る気持ちに共感を覚えます。(柳原美知子)
 

凩の吹くときも、郵便配達夫は任務とはいいながら、たくましく勤めを果たす。凩の吹く、枯れた景色に赤い郵便バイクは画になり、子どもにも愛される景色。(髙橋正子)

■選者詠/髙橋正子 
15.水替える黄菊のつんと匂うなり
花瓶の水を代える時、菊に手を伸ばすと、部屋の中に広がっていた匂いではなく、「つん」とした匂いが鼻孔をつつく。菊の花の強い香に、改めて小さく驚いている作者なのだろう。 (吉田晃)

13.初鴨の数をかぞえて座りおり
冬の到来を告げてくれる初鴨。今日は何羽いるのか数えながら、楽し気な泳ぎを眺める小春日和の心安らぐひと時です。(柳原美知子)


14.夕鵙のキチキチキチキチ長鳴けり

■選者詠/髙橋句美子
31.湯豆腐に薬味きりりと夜深し
夜が更けてから湯豆腐を食べた。疲れを取るために、辛いか酸っぱいか濃い味を付ける為に薬味をたっぷり使った様子が良く見える。薬味きりりとが良い。 (廣田洋一)

32.朝が来て富士山頂の初冠雪
今年の秋は残暑の期間が長く、冬は本当にやってくるのだろうか?と思って居た作者です。とある朝になり、漸く富士山の初冠雪を眺めました。例年より」一ヶ月遅れとは言え、少し安堵の作者です。(桑本栄太郎)

33.小春日にパンケーキ焼け夫を呼ぶ
「小春日」「パンケーキ」が暖かい雰囲気で、焼き上がりが満足のいくものであったことがうかがえます。さあいただこう、とご主人を呼ばれた声の弾み具合も伝わってきます。(多田有花)

●互選最高点句(5点)
15.水替える黄菊のつんと匂うなり/髙橋正子
集計:髙橋正子
※コメントのない句にコメントをよろしくお願いします。思ったこと、感じたこと、ご自由にお書きください。

11月11日(月)

晴れ
桜冬芽空ゆく雁にふと見ゆる   正子
冬来たり広葉の森の巣箱にも   正子
冬の日の広葉を透けて吾を包む  正子
●11月月例ネット句会入賞発表
みんなの選を見ていると、選は難しいのだと、つくづく思う。昔、先輩諸氏から、「俳句の選はその人のレベルの選しかできない。初心者は初心者の句をとる」と聞かされた。選のレベルが上がらないとよい句は生まれない。よい歳時記を使わないとよい句が生まれない感じもする。

●朝6時ごろ、小鳥を探しに出かけた。夜の雨で鯛ヶ崎公園は湿って、虫が良く鳴いている。小鳥は鵯が鳴いているが、ほかの鳥の声は聞こえない。

昨日繁茂する葛の蔓を足にひっかけて転びそうになった。蔓を手繰り寄せて、歩く人が引っ掛からないように蔓を振り分けて道を作った。今朝みると、一本蔓が道を横切って伸びている。ひっかけそうなので、引っ張るが、どうにもならない。今年の葛はよく茂っている。日本中に葛がはびこっているのだろう。葛粉が無くなるのを心配したが、それより葛の根を掘る人がいないのが心配だ。

●朝、入賞発表の原稿を書くのに寒い。思い切って、この辺で一人用の炬燵を出した。立方体の炬燵は座布団に乗せ、毛布を折りたたんで掛けるとそれで出来上がり。座るのは椅子。椅子に腰かけて炬燵にあたる。お陰で原稿がはかどる。

●図書館へ。『若き詩人への手紙 若き女性への手紙』(リルケ著/高安國世訳・新潮社)を借りる。ほかに雑誌3冊。「若き詩人」は、フランツ・K・カプス宛て。「若き女性」は、『リルケ』の本のどこかに書いてあったと思うが、今思い出せない。

●『リルケ』(星野慎一著)に出て来るピアニスト、ベンベヌータは『神様の話』に感激し、書店気付でリルケに手紙を出している。これを読んだとき、私は『神様の話』を読んでいなかったので、読み飛ばしていたところがあった。『神様の話』を読んだリルケとベンベヌータの関係がよくわかる。そういう話からリルケは青い目をして、真面目で高潔な人の印象がした。