■6月月例ネット句会/入賞発表■

■6月月例ネット句会入賞発表■
2024年6月10日

【金賞】
23.夏雲に海は青さを極めけり/吉田 晃
夏雲と海の青さのコントラストに力強さがある。「極めけり」がそのコントラストを強調し、夏雲と海とが双方を強め合っている。爽快で堂々とした句。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
18.晴天や見渡すかぎりの抜き玉葱/柳原美知子
玉葱の収穫が晴天を見計らって行われた。見渡すかぎりの畑に抜き置かれた玉葱は大豊作を意味している。豊作の姿を眺め見るのもうれしいことだ。(髙橋正子)

07.参道の先で風鈴鳴り響く/高橋秀之
寺社の参道の先のほうで、風鈴市があるのか、風鈴が鳴る音が聞こえる。静かな参道に響くすずしい風鈴の音色に夏らしい生活を思う。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
01.新調の靴をおろすや風薫る/桑本栄太郎
風薫る季節の心弾む気持ちを表すかのように新調した靴をおろす。風薫るの中を運ぶ足も軽く、はつらつと歩く姿が想像できて、気持ちが良い句。(髙橋正子)

20.茄子の花薄紫をうつむきに/多田有花
茄子は葉にも茎にも花にも紫の色があるが、花は特に薄紫で下向きに咲く。この「うつむいて」咲く花には、想いがある様子で、その控えめな咲き方に惹かれるものがある。(髙橋正子)

36.薔薇のブーケ抱えて入る写真館/髙橋句美子
薔薇のブーケを抱えて写真館に入ったと言う事実だけが述べられているが、その背景や薔薇のブーケをもって写真に映る様子など場面が想像できる。特に薔薇のブーケが季節を象徴してよい記念になっている。(髙橋正子)

【髙橋正子特選/7句】
01.新調の靴をおろすや風薫る/桑本栄太郎
新調した靴をおろし、気持ちも新たに風薫る戸外へと踏み出す心地よさと意気込みが感じられます。 (柳原美知子)

23.夏雲に海は青さを極めけり/吉田 晃
夏雲と青い雲がくっきりと、誰の目からも鮮やかな情景をよくとらえています。「極めけり」の言い切りが印象深い絵画のようで、飾っておきたくなります。(弓削和人)
青空に湧き上がる白い大きな雲は生命観に溢れ力強さか満ちています。それに対して大きな海は素晴らしい青さを誇っています。まさに夏の素晴らしい景ですね。(小口泰與)
白い雲との対比で海の青さが眩しい夏の爽快感を感じました。(西村友宏)

27.青空へ伸びやかに立つ立葵/西村友宏
伸びやかというのは立葵を表すのにぴったりの形容です。同時に詠者ご自身の心の持ちようもそこに投影されています。青空へ伸びやかに立つのはご自身でもあります。(多田有花)

36.薔薇のブーケ抱えて入る写真館/髙橋句美子
何か特別な記念日なのでしょうか。写真館で写真を撮影する機会は現代生活では稀なことと思います。高揚感は薔薇のブーケにも表されています。(多田有花)
写真館で写真を撮る、きっと特別な日なのでしょう。大切に胸に抱えた花束は、今が盛りの薔薇。「ブーケ」という言葉からも、背筋がすっと伸びる、華やいだ雰囲気が伝わります。(川名ますみ)

07.参道の先で風鈴鳴り響く/高橋秀之
18.晴天や見渡すかぎりの抜き玉葱/柳原美知子 
20.茄子の花薄紫をうつむきに/多田有花

【髙橋句美子特選/7句】
13.六月のドラセナに葉の新たなる/川名ますみ
ドラセナは葉が美しいですが、六月の光にまた新しく出てきた葉が映え、色合いを楽しませてくれます。季節の喜びが感じられます。 (柳原美知子)

17.夏海へ音わたらせて二両列車/柳原美知子
時間がゆっくり流れてのどかな雰囲気がかんじられます。(髙橋句美子)

21.紫陽花や縁より彩始まりぬ/多田有花
うすみどりの毬の紫陽花がいつの間にか縁に仄かな青や紅を帯び、日毎に彩を変えていくのを見るのは梅雨の時期の楽しみのひとつですね。 (柳原美知子)

25.日が射して青葉の透ける並木道/西村友宏
青葉が日に透ける美しい並木道、清々しい風に吹かれて歩けば、心も軽く弾むようです。 (柳原美知子)

29.菖蒲田の水のめぐりを飛ぶ蛍/髙橋正子
菖蒲田に水がさざめき、菖蒲の中から蛍が舞い上がって来る。菖蒲田に水がめぐり、蛍の光がめぐる。暗闇に体が溶け込んでゆく錯覚にとらわれたのだと想像する。(吉田晃)

11.喧騒の六角張りて鉄線花/弓削和人
23.夏雲に海は青さを極めけり/吉田 晃

【入選/11句】
04.水嵩の増し来る利根や鮎遡上/小口泰與
梅雨の時期を控えて上流のダムが水位調整を始めたのでしょうか。そんな水嵩の増えた利根川で鮎が遡上する光景も自然の一コマです。(高橋秀之)

06.利根川の波の遊びて夏の月/小口泰與
まだ暮れきらぬ利根川に波がたゆたい、紺色の薄闇に浮かぶ夏の月。ゆったりと刻が流れてゆきます。 (柳原美知子)

10.渓谷の滝のしぶきや甘味店/弓削和人
何処の渓谷の滝の光景でしょうか?その滝をのぞむ場所に、甘味店があります。景観を愛でながら頂く甘味は、得も言えないほど涼やかですね。(桑本栄太郎)

14.走り梅雨カット少なき映画みる/川名ますみ
誰の作品をご覧になったのでしょうか。長回しがひとつの作風になっている映画監督もありますね。今年の梅雨入りは記録的な遅さになりそうです。(多田有花)

16.朝明ける紫陽花の色ゆらす風に/柳原美知子
今頃の季節の雰囲気を美しく詠んでおられます。朝は最も早く明けるころです。紫陽花が色づきそれを早朝の風が揺らしていきます。(多田有花)

19.驟雨来る夕餉の支度しておれば/多田有花
夕餉の支度をしていると急にどっと雨が降りだして、支度が終わらないうちにやんでしまう。まさに驟雨です。(高橋秀之)

22.放たれしここを稚鮎はふる里と/吉田 晃
稚鮎の放流があった時の感慨なのでしょうか。ふる里への思いが目の前の鮎たちにも伝わるといいですね。(高橋秀之)

31.山道になだれ咲きたる額の花/廣田洋一
なだれ咲きたるに創られた秩序ではなく、自然の力強さを感じます。(高橋秀之)

05.風薫る垣穂に隠る野鳥かな/小口泰與
08.雲間から夏の日一条降り注ぐ/高橋秀之
09.夏の海吹き寄す風は温かく/高橋秀之

■選者詠/髙橋正子
29.菖蒲田の水のめぐりを飛ぶ蛍
菖蒲田に水がさざめき、菖蒲の中から蛍が舞い上がって来る。菖蒲田に水がめぐり、蛍の光がめぐる。暗闇に体が溶け込んでゆく錯覚にとらわれたのだと想像する。(吉田晃)

28.蛍火の十ほど飛べる蛍狩
30.暮れ兼ぬる空を蛍の生(あ)れて飛ぶ

■選者詠/髙橋句美子
36.薔薇のブーケ抱えて入る写真館
何か特別な記念日なのでしょうか。写真館で写真を撮影する機会は現代生活では稀なことと思います。高揚感は薔薇のブーケにも表されています。(多田有花)
写真館で写真を撮る、きっと特別な日なのでしょう。大切に胸に抱えた花束は、今が盛りの薔薇。「ブーケ」という言葉からも、背筋がすっと伸びる、華やいだ雰囲気が伝わります。(川名ますみ)

34.紫陽花の小さな花の青集う
35.向日葵の花束花屋よりあふれ

●互選最高点句(8点)
23.夏雲に海は青さを極めけり/吉田 晃
集計:髙橋正子

※コメントのない句にコメントをよろしくお願いします。思ったこと、感じたこと、ご自由にお書きください。

6月10日(月)

雨のち曇り
菩提樹の散華に古き興禅寺 正子
石仏に蛍袋に雨あがり    正子
梔子の香や三日月の円あおし 正子

●昨日四国が梅雨入り。朝起きた時は雨が降っていたが、9時ごろには上がった。隣町の高田八幡宮まで歩いて出かけた。90段の石段はうっそうとした木々の下で雨で十分に濡れていた。一度は一息ついて境内まで上ると意外と小さい社だった。ひとり拝んでいる人がいた。境内は周囲が囲われて行き止まりかと思ったが、左には道が、右には石段があった。境内から右手を見るとうっそうとした杜が見える。石段を下りていくと興禅寺に行きつく。五十メートルほどもない。八幡宮に来るのに石段を上る必要はなかった。興禅寺からならすぐだった。興禅寺も八幡宮も丘の頂上あたりにある。

興禅寺で芭蕉の句碑を見た。寺の掃除をしている女性が、句碑に覆いかぶさっている?梅の枝を鋏で切りはらってくれたので、句碑の字がかなり読めた。芭蕉の句「清瀧や奈三耳塵那起夏廼月 翁(清瀧や波に塵なき夏の月 翁)」があり、その下方に46名の俳句が彫ってある。俳号の横にタカタとか、ツナシマとか、カナ川とか地名が書いてある。おそらく句会の連中が自分たちの句碑を建てることになり、芭蕉の句と自分たちの句を彫り興禅寺の山門脇に建てた経緯なのだろうと想像できた。建てた年代は読めなかった。句碑の石は趣がある。寺の女性は芭蕉の句というが、書いていることはわからないと言って、句碑の石の良さをしきりに誉めた。女性が別の帰り道を教えてくれたが、その道を行くと、どのあたりにいるのかわからなくなった。スマホに「ここはどこ?」と聞いて、今いるところの地図を出してもらい、確認しながら帰った。
●「清瀧や波に塵なき夏の月」の句は芭蕉が嵯峨野の落柿舎で亡くなる年の夏に作った句と言われる。この句は大坂の園女亭での発句「白菊の目に立てて見る塵もなし」の「塵なし」に類想があると言う理由で、亡くなる3日前に大坂の病床で「清瀧や波に散りこむ青松葉」と改案されたとされる。芭蕉の俳句の推敲の経緯を知る句としてよく取り上げられる。興禅寺のは初案の句で、なぜ初案を選んだかはわからないが、初案の句のほうがいいと言う人がいるのは確かだ。