1月10日(金)

★初旅にみずほの山の青を飛び  正子
飛行機での新年の華やぎの有る今年初めての旅。日本の国の素晴らしい山。富士山でしょうか。その神々しい山を眼下にみて今年の素晴らしさひと時を感じている作者。素敵な句ですね。(小口 泰與)

○今日の俳句
冬落暉瞳に残し帰宅せり/小口 泰與
冬落暉のイメージとしてその荘厳さが目に浮かぶ。今日の無事を思い、明日もそうであることを願う落暉を自分の心に取り込んだ思いがよい。厳しい寒さの一日の終わりなればこそ。(高橋正子)

○葉牡丹

[葉牡丹/横浜日吉本町]

★葉牡丹のおごる葉のありしづむあり/吉岡禅寺洞
★葉牡丹にうすき日さして来ては消え/久保田万太郎
★葉牡丹やわが想ふ顔みな笑まふ/石田波郷
★葉牡丹の一枚いかる形かな/原石鼎
★二株の葉牡丹瑠璃の色違ひ/西山泊雲
★葉牡丹の深紫の寒の内/松本たかし
★紫も白も葉牡丹雪被り/高橋正子

ハボタン(葉牡丹 Brassica oleracea var. acephala f. tricolor)は、アブラナ科アブラナ属の多年草。園芸植物として鮮やかな葉を鑑賞するが、観葉植物より一年草の草花として扱われる事が多い。名前の由来は、葉を牡丹の花に見立てたもの。 耐寒性に優れ、冬の公園を彩るほか、門松の添え物にも利用されるが、暖地では色づかず、寒地では屋外越冬できない。様々に着色した葉が、サニーレタスのように同心円状に集積した形態のものを鑑賞する。大別して葉に葉緑体以外の色素を持たない品種と、赤キャベツ同様に色素(アントシアニン)を持つものがあり、一定以下の低温に晒されてから出葉すると葉緑素が抜け、白やクリーム色、または紫、赤、桃色等に色づく。 それまでに分化した葉が周縁部を緑色に縁どり、着色した中心部の葉とのコントラストが美しい。主に冬期の花壇やプランターなどで、屋外栽培される。花は黄色で4-5月に開花するが、観賞の対象とされず、薹が立つ前に処分されてしまうことが多い。 但し、近年は薹が立って(節が伸びて)葉の密集した形態が崩れた状態を愛でる人もある。 また、多年草として育てれば樹木のような枝を出し、それぞれの枝の先端にハボタンがついた姿(踊りハボタン)となる。

◇生活する花たち「椿・野葡萄・くこ」(横浜市都筑区東山田)

1月10日

●小口泰與
いろいろの石のあらわに冬の利根★★★★
大河、利根川と言っても冬は、やはり水量が減る。河原にあらわれた石を踏み歩くと、いろいろの石があるものだ。「あらわに」に冬河原らしさが出ている。(高橋正子)

いや白き浅間の肌や冬の梅★★★
いぶかしき造形美なす氷かな★★★

●多田有花
強霜のなか登校の児童たち★★★★
児童たちは、雨の日も、風の日も、寒さ極まる日も、登校するのだが、強霜の朝も例外ではない。霜で道路も厳しい硬さ。その上をなにか浮いたように体も硬くなって歩く。(高橋正子)

地は冷えて空は明るし日脚伸ぶ★★★
手を伸ばせば届きそうなる凍雲よ★★★

●桑本栄太郎
青空の十日戎の浪速かな★★★★
十日戎浪速の春の五十払い(ごとばらい)★★★
宝恵籠(ほいかご)や南地芸妓の笑みの紅★★★

●佃 康水
寒潮を噴きて渡船の向き変える★★★★
渡船が向きを変えるときは、操舵主は手慣れたもので、寒中とはいえ、潮を勢いよく波立たせる。小さい渡船ならその様子が直に見えて、「寒潮を噴きて」 の実感となる。(高橋正子)
 
寒潮を湛え鎮まる朱の鳥居★★★
軒に吊る歯朶や乾びて丸まれり★★★

●小西 宏
北風に笹鳴りやまず山の澄む★★★
水仙の人過ぐ道に向ける白★★★★
凍て雲の千切れ吹き上げ茜色★★★

●古田敬二
冬木立に優しく寄れば小鳥来る★★★
朝の陽に木立の影とわが影と★★★★
朝の陽に枯木の巣箱赤々と★★★