●添削3月①●

[3月1日~4日]

▼3/4

●河野啓一
鳥声もひときわ高く三月に★★★★
「ひときわ高く」に春が来うれしさがよく出ている。鳥の声もはつらつとして生命感があるのが嬉しい。(高橋正子)

旧友の訃報も遠し春浅し★★★
受験子をを囲碁の相手に誘いけり★★★

●佃 康水    
広島県大竹市雛流し3句
晴れ着の児袂持たれて雛送る★★★
見返るが如く向き変え流し雛★★★
小さき手で折敷に添える雛あられ★★★

●迫田和代
丁寧にきちんと並べる古い雛★★★
はんなりと淡く柔らか雛あられ★★★
蔵の中広くて可愛い吊るし雛★★★

●小口 泰與
たらの芽や支流溢れてごうごうと★★★
花林糖かりっと噛むやうららけし★★★
春風や一糸乱れぬ庭の木々★★★

●黒谷光子
冴え返る伊吹おろしに真向かいて★★★
雪残る湖北を囲む山並に★★★
残雪の伊吹連なる山々★★★

●多田有花
カーテンを開ければ春暁むらさきに★★★
黙々と春の山ゆく楽しさよ★★★
高枝を鳴き交わしつつ四十雀★★★

●桑本栄太郎
ひし形の雛寿司弁当買いにけり★★★
一片の雲無き朝や冴返る★★★★
葦焼きの再開なりし宇治河原★★★

●川名ますみ
水仙の低きに咲くを見つけたり★★★★
この句の生命は「低きに咲く」にある。低いところは、木の下か、道の下か、幾分の湿りもあるだろう。そういったところに咲く水仙には、日向の水仙よりも陰影を帯びた魅力がある。(高橋正子)

春雨に人の差し出す傘大き★★★
運転手大きな傘を春雨へ★★★

▼3/3

●古田 敬二
はくれんの光を纏う蕾かな★★★
出勤の子へ春の陽の高くなる★★★
咲きかけの蕾や畔のイヌフグリ★★★

●多田有花
春寒の森に響きしチェーンソー★★★
まずわが家指差す春の頂で★★★
播磨富士七合目まで春の雪★★★

●高橋秀之
春風にすっきり近し生駒山★★★
店内に幾度も流れる雛まつり★★★
友の雛飾りいくつもネット見る★★★

●桑本栄太郎
冴返るとは云え陽射しの輝きぬ★★★

鷹揚に目鼻の容や土ひひな★★★★
土雛の素朴さの魅力である。鷹揚な目鼻の容に、親しみとあたたかさを感じる。(高橋正子)

眼差しの遠き追憶古ひひな★★★

●小西 宏
自転車を漕ぐまで育ち雛祭★★★
春緋鯉ゆれ陽の満てる街の川★★★
孫帰り雛壇に菓子あった場所★★★

●河野 啓一
娘の声に想い出したる雛祭り★★★
ラディッシュの葉を喰う鳥よ春浅し★★★
春潮の寄せて播磨は須磨の浦★★★

●小口 泰與
蝋梅のほろほろ散るや雨の中★★★
春の日やばらの新芽のあえかなる★★★
榛名湖の耀う波や風光る★★★

▼3/2

●高橋 秀之
雨の夜明けて大気は冴え返る★★★
早朝の雨の滴や梅一輪★★★
春寒し白む夜空と街路灯★★★

●河野 啓一
箕面より下りきて春の小川かな★★★
つくし摘む土手の下草すべすべと★★★
ひな祭り散らし寿司かなデイの昼★★★

●桑本 栄太郎
白そろい紅の綻ぶ丘の梅★★★
梅白し午後から雨の気配かな★★★
丘上の吾の独りや梅の園★★★

●小西 宏
池底を亀這って泥春めけり★★★
梅蕾はじけて一つ花の白★★★
雲の間に青空淡し梅の花★★★

●多田 有花
朝の窓描きおりなば雉の声★★★★
描いていると、朝の窓から雉の声が聞こえた。まだまだ寒いと思っていながらも野山の雉の声を聞くとまさに春を感じる。(高橋正子)

春北風に檜の木立軋みあう★★★
白梅に次々目白渡り来る★★★

●古田 敬二
夕餉には咲きかけ菜花をお浸しに★★★★
菜花がよく出回るようになった。蕾のものが一番よいというが、少し咲きかけて黄色い花の色が見えるのお総菜なら美味しく楽しめる。心安らかな夕餉。(高橋正子)

芋植える準備の畝の平行線★★★
薄氷を揺らす触れ合う音かすか★★★

●迫田 和代
春になり鳥の囀り軽やかに★★★
低く咲く足もとにパッと春の花★★★
梅が咲き蕾のむこう青い空★★★

●小口 泰與
うすうすと梅の蕾のほぐれしか★★★
滔々の利根や奥利根春の鳥★★★
山風や大内宿の風車★★★

▼3/1

●高橋 秀之
左胸に花を挿したる卒業生★★★★
卒業生の左胸を飾る花。卒業を祝う花を一人一人が付けてもらって、誇らしく卒業してゆく。皆の祝意の籠った花だ。(高橋正子)

涙あと残し電車に卒業生★★★
大小の浅蜊取り出す一つずつ★★★

●藤田裕子
和紙とりて雛のやさしき目と逢いぬ★★★★
雛を取り出して飾るとき、お顔を覆っていた和紙の薄紙を取り外すと、雛のやさしい目と逢った。しばし、お顔を眺めたであろうが、雛を飾る嬉しさもこんなところにあるのかもしれない。(高橋正子)

軸の雛桃色淡く寄り添える★★★
春一番伊予路弾ませ到来す★★★

●桑本 栄太郎
剪定の枝先匂い春めける★★★★
春になると、空気が暖かくなるせいか匂いが立ちやすくなる。剪定した枝先からも木の良い香りが立って、春めいた思いになる。(高橋正子)

刻々と雨の気配や暖かし★★★
三月や噛む音哀しく義歯入れる★★★

●佃 康水
川底に光りあまねき水草生う★★★★
水草生い流れのままに靡きけり★★★
船笛の鳴り交う瀬戸や大霞★★★

●小西 宏
かろやかに小川せせらぎいぬふぐり★★★
竹の葉に空見上げれば春の光★★★
うっすらとして白梅の芽の緑★★★

●多田 有花
春日傘横断歩道を渡りゆく★★★
春荒れに身体傾け少年は★★★
三月やパステルカラーのラグを買う★★★

●河野 啓一
賑やかに一筋春の小川かな★★★
雨上がり芽出し愉しきチューリップ★★★
白梅のようやく咲きし庭の隅★★★

●小口 泰與
芥菜や山風強き里の朝★★★
青ぬたや信濃の里へ墓参り★★★
あけぼのの磁器の冷たき春火鉢★★★

※好きな句の選とコメントを下の<コメント欄>にお書き込みください。

3月1日(金)

★雛飾り今宵雛と灯を分かつ   正子
お雛様を飾っているお部屋でのことでしょう。お雛様にも詠者にも同じ灯を分け合っている。嬉しい雛飾りのひと時です。(祝恵子)

○今日の俳句
雨降るよ軒下で抱く桃の花/祝恵子
桃の花を買って帰る途中か。雨が降りだした。止むのを待って軒下で雨宿り。桃の花と春先の雨の湿った空気は馴染みがよい。桃の花の咲くころは降ったかと思うと上がり、また降るという雨の降り方が多い。(高橋正子)

○きのう、花冠同人会長の小西宏さん、信之先生、それに私と花冠30周年記念の花冠特別号について会食しながら話す。場所は、北山田のファミレスのデニーズ。いつものイタリア料理店チーチョに行ったが、改装工事中のため、近くのデニーズになった。私は、久しぶりにビーフシチューを注文した。十分なほうれん草のソテーと、人参、じゃが芋が添えてあった。こういう野菜の摂り方は、ひと昔前の外食のイメージとは変ったと思う。アンバランスにもデザートに白玉あずきを注文した。4時間近く話した。

○ネット短信
■ネット短信No.181/2013年2月28日発信
□発信者:高橋正子(花冠代表)
□電話:045-534-3290

◆ご案内/小西 宏◆
既にご覧になった方もおられるかと思いますが、私もつい最近拝見する機会があったのでご紹介させていただきます。
「文学の森」発行の月刊「俳句界」3月号(通巻200号記念)に「俳句の未来人結社期待の新人52」の一人として、高橋句美子さんがカラー写真入りで紹介されています。
また、同誌の別冊付録「平成名句大鑑」には「現代俳句を代表する俳人500名の、代表句5000句」として、高橋信之先生、高橋正子先生の俳句がそれぞれ10句ずつ掲載されています。

月刊「俳句界」3月号
噴水の真っ直ぐ立ちて虹生る      高橋句美子

「平成名句大鑑」
水平線寒き一本沖に引く         高橋信之
雪載せてものの形の明らかに
永き日のここはどこかと振り返る
さくらさくらさくらさくらてのひらに
囀りの強き一声して去れる
海青あお記憶の夏と一つになる
赤とんぼ群れる辺りの空気がきれい
秋天の青つつぬけの一色に
わが影の付き来て楽し寒き日も
刈田の上の空までが何もない

こどもらが密かに葛湯吹いている     高橋正子
スイートピー眠くなるほど束にする
白バラの空気を巻いていて崩る
わが視線揚羽の青に流さるる
ライン上る巨船の人の裸かな
鐘の音のわれを包んで夏空へ
胸内に今日の夏野を棲まわせる
水に触れ水に映りて蜻蛉飛ぶ
手袋に手を入れ五指を広げみる
もろもろもパンも年越す楽しさよ

句美子さんは今日本で最も期待される新人の一人として注目されているわけですし、信之先生、正子先生は平成に入ってからこれまで、現代俳句を代表する優れた俳人の一人として評価されているのだと思います。ご家族3人がそろって、同時にこれほど高い評価を得ることはめったにないことなのではないでしょうか。
月刊「俳句界」はすこし大きな書店では取り扱われていると思いますので、まだご覧になっておられない方はちょっと覗いてみてはいかがでしょうか。当然のことですが、他の優れた俳人先生方のすばらしい俳句(平成に入ってからの作品)も堪能することができます。

■□花冠雑詠投句箱
5月号投句の締切は3月10日です。
http://blog.goo.ne.jp/kakan12/
■□3月ネット句会のご案内
花冠3月ネット句会の投句期間:2013年3月10日(日)午前0時~午後6時ですが、
事前投句が許されます。
※句会場(投句選句場所):
下記ブログ(花冠ネット句会掲示板)
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d
●高橋正子の俳句日記(ブログ)
http://blog.goo.ne.jp/kakan02/
●インターネット俳句センター
http://kakan.info/

○猫柳

[猫柳/東大・小石川植物園(2013年2月14日]_[猫柳/横浜・四季の森公園(2012年3月22日)]

★ぎんねずに朱ケのさばしるねこやなぎ/飯田蛇笏
★ひもすがら日は枯草に猫柳/松村蒼石
★猫柳奈良も果てなる築地越し/加藤楸邨
★猫柳高嶺は雪をあらたにす/山口誓子
★そばへ寄れば急に大きく猫柳/加倉井秋を
★ときをりの水のささやき猫柳/中村汀女
★二月はや天に影してねこやなぎ/百合山羽公
★猫柳四五歩離れて暮れてをり/高野素十
★猫柳大利根ゆるぎなく流れ/渡辺潔
★猫柳今日水音の高きこと/稲畑汀子
★谿風の鳴る日鳴らぬ日猫柳/山田弘子
★猫柳水を鏡に呆け初む/皆川盤水
★子を肩に猫柳しかない空ぞ/加藤かな文
★水音は川幅を出ず猫柳/鷹羽狩行

★猫柳さざ波向こうから寄せて/高橋正子

ネコヤナギ(猫柳、学名:Salix gracilistyla)は、ヤナギ科ヤナギ属の落葉低木。山間部の渓流から町中の小川まで、広く川辺に自生する、ヤナギの1種である。北海道〜九州までの河川の水辺で見られ、早春に川辺で穂の出る姿は美しいものである。他のヤナギ類の開花よりも一足早く花を咲かせることから、春の訪れを告げる植物とみなされる。他のヤナギ類よりも水際に生育し、株元は水に浸かるところに育つ。根本からも枝を出し、水に浸ったところからは根を下ろして株が増える。葉は細い楕円形でつやがない。初夏には綿毛につつまれた種子を飛ばす。花期は3〜4月。雌雄異株で、雄株と雌株がそれぞれ雄花と雌花を咲かす。高さは3mほど。銀白色の毛で目立つ花穂が特徴的であり、「ネコヤナギ」の和名はこれをネコの尾に見立てたことによる。花穂は生け花にもよく用いられる。ネコヤナギの樹液はカブトムシやクワガタムシ、カナブン、スズメバチの好物である。

◇生活する花たち「紅梅・赤花満作・山茱萸(さんしゅゆ)」(横浜・四季の森公園)