1月26日(日)

★大寒の水道水の真すぐ落つ   正子

○今日の俳句
瀬戸海を区切りて冬の牡蠣筏/迫田和代
穏やかな瀬戸内海ではあるが、冬は寒々として黒く浮かぶ牡蠣筏が力強く印象的である。その様子が、瀬戸海を「区切りて」となる。もとの句は、「区切るか」と疑問の「か」を用いているが、俳句では、率直に自分の気持ちを述べるのがよい。(高橋正子)

○つつじの冬芽

[さくらつつじの冬芽/東京・小石川植物園]  [つつじの冬芽/横浜・四季の森公園]

★冬芽無数に明日を信じる素朴な目/高島茂
★風呂の蓋立てかけ干して冬芽垣/岡本眸
★全山の冬芽のちから落暉前 能村研三
★火事近しつつじの冬芽呼びおこす/久保東海司

▼冬芽(ふゆめ、とうが)
秋になって葉の落とした落葉樹は、翌年の春の芽吹きのために早くも準備を始めている。近づいて枝の先っぽをよく観察してみると小さな芽を見つけることができるが、これが「冬芽」。(ちなみに、常緑樹にも「冬芽」は見られる。)そして、硬い鱗片で覆われているものを「鱗芽(りんが)」、芽がむき出しで毛などで覆われているものを「裸芽(らが)」といって、それぞれの方法で冬の寒さや乾燥から芽を守っている。(「冬芽図鑑 by 吉野・大峰フィールドノート」より)
▼ドウダンツツジ(ツツジ科)の冬芽
8~10枚の芽鱗に包まれた卵形の冬芽が互生します。側芽は発達せず頂芽だけが大きくなります。
▼さつきとつつじの違い
いわゆる「さつき」は、花もですが葉も小さいです。つつじは種類も多いですが、道路の歩道の植え込みなどに使われている普通の「つつじ」「さつき」で比較しても、葉についてはつつじの葉は長さ5~7cm、巾約1.5cm、光沢がなく、葉の裏側は服などに付着し易いく、子供がワッペンの替わりにして遊びます。一方[サツキツツジ]の所謂[皐月:サツキ]の葉は、長さ2~3cm、巾も6mm程度、表側の光沢はつつじとは別種かと思うほどです。一般に「つつじ」と言われる方は落葉性で、「さつき」と言われる方には常緑樹が多いようです。ツツジは4~5月頃紅色、ピンク、絞りなどの花をつけ、俳句の季語は[春]なのに対し、さつきの季語は[夏]なのです。サツキの名前は陰暦五月皐月に咲くところからきていますが、こちらはツツジよりやや遅く5~6月頃、真紅、淡い紅色、ピンク、絞りなど多様な花をつけ、小さい花で特に真紅の色はサツキらしい色だと思います。ツツジ・サツキとも低い植え込みや他の樹種と一緒に[大刈り込み]などにします。(「教えて!goo」より)

◇生活する花たち「寒桜・房咲き水仙・鈴懸の実」(神奈川・大船植物園)

1月26日

●小口泰與
白鳥の己れ啄ばみ動かざる★★★

対岸の火事の煙りの垂直に★★★★
対岸の火事ならば冷静に見ておれる。煙も垂直で、いかにも事なげに燃えるばかりだ。(高橋正子)

白鳥の争そう波に入日かな★★★

●迫田和代
年ごとに春待つ心の老夫婦★★★

海風に揺れる水仙しんとして★★★★
「しんとして揺れる」に、水仙の清楚で凛とした姿が詠まれている。また、海風がよい詩情を醸している。(高橋正子)

冴え渡り痛い風吹く寒月や★★★

●河野啓一
房咲きの白水仙や庭に充ち★★★★
「房咲き水仙」という水仙があるが、日本水仙よりずっと純白である。この水仙が庭に咲き充ち、清楚で可憐な庭となっている。(高橋正子)

寒灯ににじむ髭なり齢百★★★
寒いねと顔見せにくる娘のありて★★★

●桑本栄太郎
地下鉄の地上へ出でて日脚伸ぶ★★★
春遠き河川畑のマルチかな★★★

下校子の黄色帽子や春隣る★★★★
学童は、目立つように年中黄色い帽子を冠っているが、日脚が伸びてくると、帽子の黄色が明るく光を返すようになる。それに「春隣る」を感じて詠んだ句。(高橋正子)

●佃 康水
祖父の声合図に児らは凧揚げる★★★

透きとおる空を連凧うねりゆく★★★★
上空に上がった連凧は、風の勢いを得て見事にうねりながら飛んでゆく。「透きとおる空」が上空の風の吹き様を想像させてくれる。(高橋正子)

凧揚げや爺さま弾む河川敷★★★

●多田有花
見上げれば山城跡に冬木立★★★
寒風や攻防激し城跡に★★★
日脚伸ぶ城跡にたつ追悼碑★★★

●高橋秀之
蝋梅の香りの先に城がある★★★★
蝋梅の香りも向こうに見える城によって、趣ある古風な香りとなっている。(高橋正子)

冬空に光っては消える航空灯★★★
またひとつ夢が生まれる受験生★★★