★寒厨卵も餅も白ほのと 正子
寒中の空気には冷たさと同時に清浄さがあります。冷えた台所にあるお餅の白さにそうした清らかさを感じておられる様子がうかがえます。(多田有花)
○今日の俳句
大寒の薄き日差しのなか歩く/多田有花
「薄き日差し」は、大寒でなくても経験することだが、大寒であることで、清浄な日差しを感じる。(高橋正子)
○ミモザの花蕾
[ミモザの蕾/横浜日吉本町] [ミモザの花と蕾/横浜日吉本町]
★邂逅やミモザ咲く坂上りつつ/草間時彦
★教会の仰げばミモザの花たわわ/戸田菜穂
★狭くなく広くもなき庭ミモザ咲く/竹酔郎
★教会へ続く坂道ミモザ咲く/浜元さざ波
葉に刺激を与えると古代ギリシアの身振り劇ミモス”mimos”(マイム、パントマイムの前身)のように動くことからこの名がついた。ラテン語本来の発音はミモサ、英語発音はマモゥサあるいはマイモゥサとなり、日本語のミモザはフランス語発音に由来する。ここから以下のような転用により語義が広がっている。
オジギソウ(本来のミモザ)。 フサアカシア(ミモザ)は、マメ科オジギソウ属の植物の総称(オジギソウ属のラテン語名およびそれに由来する学名がMimosa)。フサアカシア、ギンヨウアカシアなどのマメ科アカシア属花卉の俗称。イギリスで、南フランスから輸入されるフサアカシアの切花を”mimosa”と呼んだ事から。アカシア属の葉は、オジギソウ属の葉によく似るが、触れても動かない。しかし花はオジギソウ属の花と類似したポンポン状の形態であることから誤用された。今日の日本ではこの用例がむしろ主流である。
◇生活する花たち「冬椿・冬の梨園・冬田」(横浜市緑区北八朔)

●Unknown
海風に揺れる水仙しんとして★★★
年ごとに春待つ心の老夫婦★★★
冴えわたり痛い風吹く寒月や★★★
●小口泰與
冬ひばり声のこぼるる田道かな★★★
群れ起つや羽音厳しき寒雀★★★★
小さい雀だが、一斉に群れて飛び立つときは、体に似合わないほどの音を立てる。「羽音厳しき」は、厳しい寒さのときだけに、強い実感となって一句となった。(高橋正子)
朝火事や山の稜線定かなり★★★
●祝恵子
境内に人の溢れて初弘法★★★
雛さまも着物も置かる茣蓙の上★★★
賑わいの境内冬芽あちこちに★★★★
賑わいは、前掲句から初弘法と知れるが、そうした境内の賑わいの中に、冬芽もあちこちの木に育っている。冬芽も賑わいのひとつである。(高橋正子)
●桑本栄太郎
真直ぐなる枝の空へと寒晴るる★★★★
寒晴れの空に、まっすぐに枝が伸びているのも、気持ちがよいものだ。晴れた空には、寒中であるが、春の兆しが見えるようだ。(高橋正子)
映画果て新京極の日脚伸ぶ★★★
嶺の端のほのと暮れゆき春隣る★★★
●多田有花
寒の沖霞みて小豆島浮かぶ★★★
瀬戸内の浦それぞれの牡蠣祭り★★★★
牡蠣は寒さの募る今が一番おいしいとき。播磨の牡蠣、広島の牡蠣などは有名だが、瀬戸内海のそれぞれの浦には、牡蠣筏が浮かんで、牡蠣の水揚げに忙しい。牡蠣祭りと称して、殻つき牡蠣を焼いたものや、すぐさま生で食べさせるものなど、いろいろ用意して提供してくれる。素朴に、みんな楽しめる牡蠣祭りだ。(高橋正子)
冬の瀬戸望みつつ入る露天風呂★★★
●下地鉄
初午や卒寿の坂の前にあり★★★
寒晴れの朝空きよき今朝の旅★★★★
旅の朝の空が晴れていると、旅も無事に楽しめそうな予感がする。「きよき」なので、ことさら、よい旅となることだろう。(高橋正子)
寒灯の一つが遠き夜の帳★★★
●小西 宏
湯たんぽの朝の湯温し髭を剃る★★★
寒すずめ手水に遊ぶコマ送り★★★
大寒の雲ゆうらりと南より★★★★
この日は、南風が吹いたか。大寒ながら、雲がゆうらりと南から吹かれてきた。「ゆうらりと」に待春の気持ちが湧く。(高橋正子)