12月22日(日)/冬至

★柚子の香に頬のほのかに温まる  正子

○今日の俳句
切干の笊に日溜まる窓辺かな/桑本栄太郎
面白いところに目を付けた。笊に干された切干大根。乾いて小さくなったものは、笊の目に詰まっている。窓辺の日あたりが嬉しい。(高橋正子)

○浦島草の実

[浦島草の実/東京白金台・自然教育園]_[浦島草の花/小口泰與さん撮影]

★籠り居て木の実草の実拾はばや 芭蕉
★草の実をとばしいつまで空地かな/稲畑汀子
★びつしりと木の実草の実明日は晴れ/畑佳与

★浦島草の実が赤し吾も鳥の目に/高橋信之
★浦島草の実の朱に落葉落葉/高橋正子

 ウラシマソウ(学名 Arisaema urashima)は、サトイモ科テンナンショウ属の宿根性の多年草。日本の本州、四国を中心に、北海道と九州の一部に分布し、関東では4月下旬から5月上旬にかけて開花する。
 地下に偏球形の球茎を形成し、周囲に子球をつけることが多い。葉は通常1枚で、成株では11~17枚の小葉を鳥足状につけるが、実生のような小型個体では3枚~5枚の小葉をつける。小葉は先が鋭く尖る狭卵形か長楕円形で通常暗緑色である。葉の存在する期間は春から秋にかけてである。肉穂花序は葉の下につき大型の仏炎苞に包まれる。仏炎苞は濃紫色、緑紫色、緑色などで変異があり、内面には白条がある。口辺部はやや開出する。舷部は広卵形で先が尖り、開花の進展とともに垂れ下がる。肉穂花序の先端の付属体は釣り糸状に長く伸長し、これが和名の起源(浦島太郎が持っている釣り竿の釣り糸に見立てたか?)とされている。肉穂花序を形成する多数の花には花弁がなく、雄花は雄蘂のみ、雌花は雌蕊のみで形成されている。
 雄花から雌花への花粉の受粉はキノコバエの仲間による虫媒によって行われる。受粉に成功し、結実可能な条件がそろった個体では、秋にかけて果実を成熟させていく。結実した雌花群は多数の果実をトウモロコシ状につけており、当初は緑色であるが秋に成熟すると朱赤色に変わる。各果実中には0~数個の種子が形成される。成熟した果実は鳥により採食されることが知られているが、採食されずにその場で倒伏して散布されることも多い。未成熟の果実は有毒のシュウ酸化合物等を含有するが、成熟すると甘くなる(食用にはならない)。

◇生活する花たち「アッサムチヤ・グランサム椿・からたちの実」(東京・小石川植物園)
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12月22日

●小口泰與
寒月やあらみの刀眺め居る★★★
大いなる人の過失や虎落笛★★★
白鳥やあな夕照の浅間山★★★

●河野啓一
裏六甲耀く氷初氷★★★★
「裏六甲」は、海から離れ山へと入ってゆき、寒さも表側とは違っている。氷が輝くのも新鮮だが、初氷となればなおさら「裏六甲」を感じることだ。(高橋正子)

小春日の空輝かに木の葉揺れ★★★
氷雨降る六甲山の山路かな★★★

●桑本栄太郎
朽野や無尽に走る高速道★★★
武庫川の中洲明かりや蘆枯るる★★★
剪定の切り口白く冬の庭★★★★
剪定された樹木の切り口の鋭さには、はっとさせられる。寒さの中で切り口の白さが目に食い込む。(高橋正子)

●小西 宏
富士澄める冬至の朝に我のあり★★★★
富士山の見えるところに住むものには、富士山は常にその姿が気になる山である。冬至の朝の澄んで張りつめた空気が富士をくっきりと、また我をくっきりとさせてくれた。「我のあり」が作者らしい。(高橋正子)

柚子生って街ゆく風の輝かし★★★
父と子の野球冬至の陽の中に★★★

●佃 康水
降りしきる霙を突いて漁船ゆく★★★★
霙が振り込む海へ出てゆく漁船を温かいまなざしで見送っている。そういう天候の厳しい日も漁業者には漁をする生活がある。(高橋正子)
 
浮寝鴨波に煽られ横滑り★★★
ほくほくの冬至かぼちゃや艶の出で★★★

●多田有花
丘ほどの山に登りてしぐるるや★★★
山を染め冬至の朝日昇り来る★★★

新しき靴で冬至の頂に★★★★
冬至にたまたま新しい登山靴を履いたとしても、夜と昼の長さが変わる冬至に「新しい」ということに新鮮な意味が生まれる。爽やかに晴れ、遠くまで見渡せる冬至の頂であったろうか。(高橋正子)

●高橋秀之
ぷかぷかと一番風呂に浮かぶ柚子★★★★
「ぷかぷかと」が楽しい。一番風呂の特権で、さらの湯、さらの柚子の清潔感と幸福感の享受。(高橋正子)

柚子の実の切れ目が大きく風呂の中★★★
子を叱る声は冬至の夜も響く★★★

●古田敬二
冬晴れのウイーンの街の動き初む★★★
尖塔の冬の木立の向こう側★★★
冬の陽の尖塔に先ず射し来たり★★★