12月2日(月)

 大阪城天守より望む
★冬がすみ生駒の山の青透かし  正子

○今日の俳句
散紅葉少女ばかりが追うており/川名ますみ
紅葉が散るのを少女ばかりが喜んで追っている。子どもは散る紅葉をも遊びにしてしまう。散る紅葉に少女たちが混じった風景はよいものだ。(高橋正子)

○初嵐(椿)

[初嵐/横浜日吉本町] 

★慎ましき白き椿の初あらし/高橋信之
★庭の樹の間に咲けり初あらし/高橋正子

今日は比較的穏やかで過ごしやすい一日で、庭仕事で少し動くと汗ばむような日和でした。庭仕事をしていると、白い物が目に止まりましたので、見てみると初嵐がこちらを向いて咲いておりました。色々調べてみますと、「初嵐」は、すでに1847年の「剪花翁伝」には記載されているという古い品種だそうで、白い色で、一重で筒咲き、もしくはラッパ咲きで蕾は尖っております。中輪で10月から3月にかけてが開花期といわれておりますが、我家の初嵐は、毎年炉開きの頃咲き始めます。ところが、今年は太神楽を使ったので忘れておりました。「初嵐」という風雅な名にふさわしく、清楚で優しい雰囲気の花です。(ブログ「tyakoの茶の湯往来」より)

俳句日記/高橋正子 1999年12月17日(金)
雨が降りそうな気配。砥部のわが家をのぞく。ほぼ一年ぶりだが、思ったより雑草が生えてなく、それでも冬らしい庭になっている。ひいらぎは、花が終っていても、かすかな香り。山茶花は、今が盛りだけれど、花数は少なく、椿は、はつあらし。玄関の椿がいつもより早く、白い蕾をふくらませている。早春の黄色い花、さんしゅは、固い蕾を枝先につけている。万両もほうぼうに生えて、赤い実を光らせて、都わすれもだいじょうぶ。客間の机は、さすが、一年のほこりをかぶり、忘却のかなたから、やって来たように鎮座している。はなれに括って置いた本も、傾いてすでに、記憶の残照のようである。こういう光景は、仮の世にまちがいない。

◇生活する花たち「柊・茶の花・錦木紅葉」(横浜日吉本町)

12月2日

●小口泰與
隼や風の鍛えし里の子等★★★★
子供は風の子ではあるが、赤城颪で有名な上州の子は「風の鍛えし」という表現が当てはまる。隼はその風を受けて飛ぶのだ。(高橋正子)

夕暮れの風にさわだつ落葉かな★★★
電飾や冬夕焼のあかあかと★★★

●祝恵子
城壁の巨石に影を冬紅葉★★★★
「巨石」が効いた。紅葉の枝が城壁の石垣に垂れて影を映しているのだろう。冬紅葉の影が割れることなく趣き深く垂れている。(高橋正子)

鳥居抜け紅葉と幟の七五三★★★
冬ざくら橋より見送る遊覧船★★★

●桑本栄太郎
着水の飛沫耀よう冬の池★★★
朝日背にルアー投げ入れ冬の池★★★

佇めば蘆を抜けゆく冬の風★★★★
佇んで初めてわかること。枯蘆の中を風が抜けている。「冬の風」は、また蘆の冬の姿を想像させてくれる。(高橋正子)

●多田有花
登る足朴の落葉の上に置く★★★

ふかふかと落葉に埋もれ下りけり★★★★
山の路はすっかり落葉に埋もれてしまった。山路を下れば落葉がふかふかとして足を埋めるほどだ。山路もすっかり冬になった。(高橋正子)

冬の昼山下りし身を泡風呂に★★★

●小西 宏
森奥のひと光なり花八手★★★

【原句】午後の日の影長き野に木の葉踏む
【添削】午後の日に木の影長し落葉踏み★★★★
木の影が長々と落葉に映っているところを踏んでゆく午後の静かな明るさがよい。

木の葉旧る小楢の道に癒される★★★