11月5日(火)

★紺碧の天と対いて刈田あり  正子
やや黒みをおびた秋空の蒼に対いて、稲を刈り終わったあとの田は面がにわかに広々として、一面に切り株が並ぶ刈田と秋の透き通った蒼空との対比が素晴らしいですね。(小口泰與)

○今日の俳句
ままごとのお椀かろしや赤のまま/小口泰與
「お椀かろし」がいい。作者はたわむれにままごとのお客になったとも思えるが、赤のままをいれたお椀があまりにも軽いこと、そこに感銘がある。(高橋正子)

○黒鉄黐(クロガネモチ)

[黒鉄黐/横浜・四季の森公園]

★赤がうれし黒鉄黐に朝が来て/高橋正子

クロガネモチ(黒鉄黐、学名 Ilex rotunda)は、モチノキ科モチノキ属の常緑高木。高木に分類されるものの、自然状態での成長は普通10m程度にとどまり、あまり高くならない。明るいところを好む。葉は革質で楕円形やや波打つことが多く、深緑色。表面につやがある。若い茎には陵があり、紫っぽく色づくことが多い。春4月に新芽を吹き、葉が交替する。雌雄異株で、花は淡紫色、5月から6月に咲く。たくさんの果実を秋につける。果実は真っ赤な球形で、直径6mmほど。本州(茨城・福井以西)・四国・九州・琉球列島に産し、国外では台湾・中国・インドシナまで分布する。低地の森林に多く、しばしば海岸林にも顔を出す。しばしば庭木として用いられ、比較的都市環境にも耐えることから、公園樹、あるいは街路樹として植えられる。「クロガネモチ」が「金持ち」に通じるから縁起木として庭木として好まれる地域もある。西日本では野鳥が種を運び、庭等に野生えすることがある。材木は農機具の柄としても用いられる。

◇生活する花たち「秋の野芥子・銀木犀・金木犀」(横浜日吉本町)

11月5日

●小口泰與
蔓も葉も寡ってお粥やさつま芋★★★
写真家の山路行きかうもみじかな★★★
蒼空や覚満淵の草もみじ★★★

●河野啓一
木枯しの吹きしとテレビ伝えけり★★★
並木道桜紅葉はうす紅葉★★★
木々の葉の散り初め街に冬近し★★★

●桑本栄太郎
山粧ふ山に向かいて丘をゆく★★★★
「山に向かいて」も「丘をゆく」おおらかなリズムがある。そのリズムが内容とマッチして素晴らしい。(高橋正子)

数珠玉や遠きふるさと想いおり★★★
草むらのみどりに絡む赤のまま★★★

●小西 宏
霧雨のそこにあるべきスカイビル★★★

冬近し青染み来る朝の窓★★★★
「青染み来る」の感覚の冴えが、「冬近し」をよく捉えている。厳しくも大変美しい朝の窓である。(高橋正子)

うす赤き鎌の月なり暮れの秋★★★

●多田有花
下山する木枯し一号吹く中を★★★★
近畿地方ははや木枯しが吹いたという。第一号の木枯し下山を余儀なくされた、というより、木枯しに付き添われて下山した感じだ。(高橋正子)

秋山に詩吟する人笛吹く人★★★
猪が土掘り起こす山路かな★★★