11月4日(月)

★ポプラ黄葉雲寄り雲のまた流る  正子
ポプラの大きな樹も黄葉になったきた。その黄葉に寄り添うように又、流れるように雲がゆくのが見える。(祝恵子)

○今日の俳句
芒日を透かしておりぬ寺静か/祝恵子
日当たりのよい寺はだれも居ぬようだ。芒が日を透かし、これ以上ないような静けさと、穏やかな明るさが思われる。(高橋正子)

○ナガボノシロワレモコウ

[ナガボノシロワレモコウ/東京白金台・自然教育園]_[吾亦紅(ワレモコウ)/横浜市港北区松の川緑道]

  東京白金台・自然教育園
★吾亦紅の白花を垂れ池近し/高橋信之
  百花園
★吾亦紅スカイツリーのある空に/高橋正子
  松山
★吾亦紅コーヒー店のくらがりに/高橋正子

 吾亦紅をこれでもか、というほど見た。四季の森公園、近所の庭。しかし、白い吾亦紅があるのは、思いもしなかった。ナガボノシロワレモコウというのがあると、自然教育園の写真を見せてくれた。穂が長いので、一見ワレモコウには見えない。

★まぼろしのごとくナガボノワレモコウ/高橋正子

 ナガボノシロワレモコウ(Sanguisorba tenuifolia)は、バラ科ワレモコウ属の多年草で、湿原や湿性の草原に生育する。北海道・関東地方以北の本州、樺太に分布するが、中国地方などにも隔離分布している。湿原に生育する植物は、氷河時代に分布したものが生き残っていることがあり、ナガボノシロワレモコウもその例の1つである。地下に太い根茎があり、8月から10月にかけ、高さ1mほどの茎を出して花を付ける。茎の上部は枝分かれして長さ2~5cm程の花穂を出し、長いものは垂れ下がる。花は先端から咲き始め、花弁はない。萼片は4枚で白色であり、これが花の色となっている。雄しべは4本で長く、黒い葯が目立つ。葉は11~15の小葉からなり、小葉の幅は狭いく、三角形の鋸歯がある。
 ワレモコウ(吾亦紅、吾木香)は、バラ科・ワレモコウ属。日本列島、朝鮮半島、中国大陸、シベリアなどに分布しており、アラスカでは帰化植物として自生している。草地に生える多年生草本。地下茎は太くて短い。根出葉は長い柄があり、羽状複葉、小葉は細長い楕円形、細かい鋸歯がある。秋に茎を伸ばし、その先に穂状の可憐な花をつける。穂は短く楕円形につまり、暗紅色に色づく。「ワレモコウ」の漢字表記には吾亦紅の他に我吾紅、吾木香、我毛紅などがある。このようになったのは諸説があるが、一説によると、「われもこうありたい」とはかない思いをこめて名づけられたという。また、命名するときに、赤黒いこの花はなに色だろうか、と論議があり、その時みなそれぞれに茶色、こげ茶、紫などと言い張った。そのとき、選者に、どこからか「いや、私は断じて紅ですよ」と言うのが聞こえた。選者は「花が自分で言っているのだから間違いない、われも紅とする」で「我亦紅」となったという説もある。

◇生活する花たち「十月桜・白ほととぎす・野葡萄」(横浜・東慶寺)

11月4日

●小口泰與
ひつじ田や初冠雪の浅間山★★★

牧の馬声高らかや草の花
牧馬の声高らかや草の花★★★★(正子添削)
「声高らかや」に「草の花」を対比させたので、句の情景が大きくなった。馬の嘶きも空高く届き、草が花をつけた牧場が広がる。晴れやかで、穏やかな牧場を想像させる。(高橋正子)

ひつじ田や雲影抱く山の肌★★★

●河野啓一
コリウスの色鮮やかに秋深し★★★
孫二人柿の熟しを待つごとく★★★

黄落の大往生や叔父逝きぬ★★★★
黄落の季節にあわせるように、大往生をされた。この世の生滅を自然のめぐりとして大きく受け入れている。ご冥福をお祈りいたします。(高橋正子)

●多田有花
紅葉愛でつつ岩棚の下で食事★★★★
岩棚の下は、屋根の下にいるようなもので、紅葉を愛でながらの食事は雰囲気が変わって愉快だろう。辺りの紅葉山の景色が想像できる。(高橋正子)

時雨来て今日の登頂断念す★★★
山里の秋の日暮れの早かりし★★★

●桑本栄太郎
坂道のお茶の花咲く垣根かな★★★
箒木の庭にもみづる山の里★★★

コスモスの風湧き上がる丘の畑★★★★
丘のコスモス畑。コスモスに吹いてきた風がコスモスを揺らし、包むように湧き上がっている。上昇気分の爽やかさがいい。(高橋正子)

●高橋秀之
雨上がり薄い日差しも空高く★★★
一鉢のコスモス僅かな風に揺れ★★★

秋の蝶ゆっくり羽ばたき大空へ★★★★
「ゆっくり」によって秋の蝶の存在が確かになっている。小さくも確かな蝶が大空へ羽ばたくのが印象的。(高橋正子)