10月29日(火)

★秋水湧く波紋をそのまま手にすくう  正子
秋の澄みきった湧き水、その清らかな波紋をそっと手にすくってみる。冷たい水に心洗われる心地である。 (祝恵子)

○今日の俳句
しりとりをしつつ帰る子秋の暮/祝恵子
女の子たちであろうか。秋の暮をきりもないしりとり遊びをしながら帰る子どもたちが、かわいらしく、ほほえましい。作者の子らへの眼差しがやさしい。(高橋正子)

○薬師草(やくしそう)

[薬師草/横浜・四季の森公園]

 ★森に咲く薬師という名の菊凛と/高橋信之

 ヤクシソウ(薬師草、学名:Youngia denticulata)は、キク科オニタビラコ属の二年草。高さは30-120 cm。初期には根出葉があるが、花時にはほとんどなくなり、茎葉だけになる。茎葉は基部が張り出して茎を抱く。葉は互生し、長さ5-10 cm、幅2-5 cmの長楕円形-倒卵形。茎や葉を折ると苦味のある白い乳液を出す。花期は9-11月で枝の上部に直径1.5 cmほどの黄色い花を固まって咲かせる。花は上向きに開くが、花が終わると下向きになる。 和名の由来は不明であるとする説や、葉の形が薬師如来の光背に似ているとする説、かつて薬草(民間薬として皮膚の腫れものに外用)に使われたことによるとする説がある。中国名は「苦菜」。学名の「denticulata」は、「細歯のある」の意味である。
 朝鮮半島・中国・台湾・インドネシア・ベトナム・インドなどと日本の北海道・本州・四国・九州・屋久島の日当たりのよい乾いた山野に生える。奥秩父や四国山地などの石灰岩、蛇紋岩地帯の岩壁にも分布する。新しく林道をつけた斜面の裸地に真っ先に侵入するパイオニア植物である。花の外観は同科のアキノノゲシやハナニガナなどに似ている。

◇生活する花たち「犬蓼・金木犀・白曼珠沙華」(横浜四季の森公園)

10月29日

●小口泰與
老斑の掌(て)や秋の夜の独り酒★★★
身綺麗に歳をとりたや蔦紅葉★★★
山風や身の丈越えし花すすき★★★

●河野啓一
青空に揺れて耀く柿の赤★★★
夕陽浴び柿に群がる小鳥かな★★★
列島の空秋晴れる偏西風★★★

●桑本栄太郎
新築の捗る庭に金木犀★★★★
金木犀のある庭に家が建っている。建て替えなのか、日々見ているとずいぶん早く工程が進んでいる。冬が来る前には入居したい気持ちも見える。金木犀もいい匂いだ。立ち上がったら落ち着いた家になるだろう。(高橋正子)

梢より紅葉初め居り嵐あと★★★
生駒嶺や秋の夕日の茜雲★★★

●佃 康水
通草の実三つ葉添えある道の駅★★★
石蕗咲きて鯉跳ね上がる音近し★★★
色変えぬ松へ耀く被爆川★★★

●小西 宏
虫食いの桜紅葉の鉄仮面★★★
十月の冷たき細き雨の薔薇★★★
松茸に見立てエリンギ二人鍋★★★

●古田敬二
子を待てば木の実落ち来る音たてて★★★
夜のうちに庭に降り敷く秋の花★★★
のぼたんの色鮮やかに敷くあした★★★