8月14日

●小口泰與
線香の馥郁たるや魂迎え★★★
きちこうや一朶の雲の生まれおり★★★
靄をを呼ぶ硬き風吹き沢桔梗★★★

●祝恵子
ハイビスカス連日咲いて鉢にあり★★★★
水遊びする子は自転車乗りいれて★★★
とうがんのズシリ重さを蔓支え★★★

●迫田和代
曇り空日傘をどこかに置き忘れ★★★
遠くから海鳴りの音夜の秋★★★
草むらにかそけき虫の音秋に入り★★★

●多田有花
ふるさとは墓参の道のあるところ★★★
花筒に冷たき清水盂蘭盆会★★★★
百日紅木陰に並ぶ地蔵尊★★★

●下地鉄
雷鳴去り暫しの揺れのしずけさよ★★★
雷鳴の去り行く空の蒼さかな★★★★
鳴り響いた雷鳴が小さくなって去って行く。去ってゆく空を見れば、青々とした空である。もう、雷鳴もないだろう。ほっと安心するはれやかな心。(高橋正子)

雷雨さり水平の線くっきりと★★★

●小西 宏
蜩の鳴きいし森の流れ星★★★
海近くトンボ集える墓参り★★★★
それぞれの家の墓地は、山裾にあったり、市街地を眺める丘にあったりする。宏さんの墓参は海の近くのお墓。見晴らしのよい墓地には、トンボが集い爽やかである。(高橋正子)

法師蝉鳴いて半月やや西へ★★★

8月14日(水)

★白桃の無疵を少女に剥き与う  正子
無疵の白桃はそのまま無垢な少女の象徴です。それを丁寧に剥いて少女に与えられました。甘い桃の香りがしてくるようです。
(多田有花)

○今日の俳句
緑陰に昼の草刈機が休む/多田有花
朝涼しいうちに使われた草刈機は、昼の暑い時間は、緑陰で休む。草刈機も人のようだ。(高橋正子)

○溝萩(みそはぎ)・禊萩(みそはぎ)

[溝萩/東京・向島百花園]          [溝萩/横浜・四季の森公園]

★みそ萩や水につければ風の吹/小林一茶
★溝萩の咲けば偲べる人のあり/稲畑汀子
★溝萩咲く父母の仲人たりし家/松崎鉄之介
★みぞ萩や旅からもどりすぐ旅に/山田六甲
★千屈菜に澄みし水あり休耕田/小浦遊月
★溝萩や束ねて丈の定まりぬ/上月智子

 溝萩は、水辺や湿地に育ち、淡紅紫色の小さい花が穂のように咲く。私が生まれた備後南部では、これを「盆花(ぼにばな)と呼んでいた。盆のことを「ぼに」と呼んで「ぼにがくるけん、草を刈らにゃあ。」というように使っていた。瀬戸内海沿岸は、夏、雨が少ないので、讃岐のため池ほどではなくても、多くの田に野井戸があった。稲田の水が池から放流される灌漑用水では足りないときは、この野井戸が役に立っている。この野井戸のほとりや、田んぼの隅に溝萩が、それこそお盆用に植えられていた。お盆が近づくと、溝萩の束を持って、道を戻ってくる人を良く見かけた。その淡紅紫色の花穂が故郷のお盆の色である。

★みそ萩を束ね抱えし人に遇う/高橋正子

 ミソハギ(禊萩、学名:Lythrum anceps)はミソハギ科の多年草。湿地や田の畔などに生え、また栽培される。日本および朝鮮半島に分布。茎の断面は四角い。葉は長さ数センチで細長く、対生で交互に直角の方向に出る。お盆のころ紅紫色6弁の小さい花を先端部の葉腋に多数つける。盆花としてよく使われ、ボンバナ、ショウリョウバナ(精霊花)などの名もある。ミソハギの和名の由来はハギに似て禊(みそぎ)に使ったことから禊萩、または溝に生えることから溝萩によるといわれる。