4月1日(月)

★煽られて花のゆるるは大いなる  正子
見事に咲いた桜の樹が春風に煽られて枝を揺らせている。しかし花吹雪になるほどでもなく、今や春爛漫の候、しっかりと花をつけて動じない。自然の精妙さと大きさがおのずから体感されるるような素敵な御句と思います。(河野啓一)

○今日の俳句
高々と蝶越え来しや伊吹嶺/河野啓一
初蝶であろうか。目の前に現れた蝶は、あの伊吹嶺を高々と越えて来たに違いない。蝶に寄せる新鮮な思いがよく読まれている。(高橋正子)

○樒(しきみ)の花

[樒の花/横浜日吉本町]

★ゆかしさよ樒花咲く雨の中/与謝蕪村
★山住も樒の花をみる日かな 雲舎
★樒咲く山の空き家のすみに咲く うらら
★老婆らの元気な声や花樒 819maker

樒(シキミ、櫁、梻、学名:Illicium religiosum Illicium anisatum)はシキミ科シキミ属の常緑高木である。「しきび」とも読む。有毒。仏事に用いるため寺院に植栽される。常緑樹で、高さは10メートル程度、胸高直径は30センチ・メートルとなる。樹皮は暗い灰褐色になり、老木になると縦の裂け目を生じる。若枝は緑色。葉は、枝の先端に集まってつき、短い葉柄を持つ楕円形から倒卵形を帯で、長さ5 – 10センチ・メートル、深緑色でつやがある。葉の質はやや厚く、何となく波打ったようになることが多い。葉の先端は急に突き出して鈍端。花は葉の付け根から一つずつ出て春に咲く。花びらは淡黄色で細長く、ややねじれたようになる。果実は扁平で周囲に8本の突起が出ている。上面が裂開し種子が出る。種子は褐色でつやがあり、小さいドングリを押しつぶしたような形をしている。
日本では本州中部以南、四国、九州、琉球に分布し、中国にも分布する。
樒(シキミ・シキビ)は俗にハナノキ・ハナシバ・コウシバ・佛前草という。弘法大師が青蓮華の代用として密教の御修法にお使いになられた。青蓮花は天竺の無熱池にあるとされその華に似ているので御佛前の供養用に使われた。なにより四季に美しく年中継続して手に入れやすいので我国では俗古来よりこの枝葉を佛前墓前に供えている。古代にはサカキと同様に神社でも用いられたといわれるが、神式での榊(=サカキ)のように梻と書いた。(木偏に佛、「佛」は仏の旧字体)という国字もある。現在でも京都市の愛宕神社などの神事には榊でなく、シキミが使われている。シキミを挿した水は、腐りにくいのである。

◇生活する花たち「菜の花・片栗の花・山桜」(横浜・四季の森公園)

4月1日(月)

●多田 有花
朝桜嶺の日の出に匂い立つ★★★★
嶺の桜には、真っ先に日が昇る。日の出の澄みきった日の光に桜も匂い立つのだ。潔くすっきりとした句。(高橋正子)

見渡せる山のいずこも山桜★★★
谷へ向き枝垂桜の枝伸ばす★★★

●小西 宏
花冷えや小鳥はげしく鳴き交わす★★★
幹くねり枝おどらせて桃の花★★★
窓暮れゆく桜明かりを残しつつ ★★★

●小口泰與
山風を恐るる庭の桜草★★★
今朝も来し二羽の目白や庭の木に★★★
あけぼのや榛名の裾野梅香る★★★

●河野啓一
筑紫野の春をゆたかに次郎かな★★★
仲春の川面に低く鳶舞う★★★
【原句】水郷や柳芽青く船下り
【正子添削】水郷の柳芽青し船下り★★★
「水郷や」とすれば、「水郷」が句のテーマとなって、中七、下五と切れすぎるので添削。
青く芽吹く柳を見ながら船下りは、気持ちが明るく和んで冬から春へ移った喜びがある。(高橋正子)

●桑本栄太郎
休日なれば卵享くべき復活祭★★★
夕暮れのしだれ桜よ紅の濃し★★★
大橋の暮れて灯燈す弥生尽★★★★
暮れて橋に燈る灯に、人はなにがしか哀愁を覚える。「弥生尽」は春が終わる意味でもあるので感慨が湧く。(高橋正子)

●川名ますみ
竹垣に透けし壕辺の土手青む★★★
野の花の向こうお壕と花の雲★★★
空へ触る工場の跡の花こぶし★★★