3月29日(金)

★山桜雲を呼びつつ咲き満つる  正子

○今日の俳句
残る鴨みずから生みし輪の芯に/川名ますみ
「残る鴨」なので、みずからが生んだ輪の中心にいるという事実が生きる。温んだ水が、しずかに輪を描き、その中心にいる鴨に、独りでいる意思が読み取れる。(高橋正子)

○山吹

[八重山吹/横浜緑区北八朔]        [白山吹/横浜日吉本町]

★ほろほろと山吹ちるか瀧の音/松尾芭蕉
★濃山吹墨をすりつゝ流し目に/松本たかし
★山吹や根雪の上の飛騨の径/前田普羅
★眼帯の朝一眼の濃山吹/桂 信子
★山吹や川よりあがる雫かな/斯波園女
★ちぎり捨てあり山吹の花と葉と/波多野爽波
★歩かねば山吹の黄に近づけず/酒井弘司

 ヤマブキ(山吹、学名:Kerria japonica)はバラ科ヤマブキ属(本種のみの一属一種)の落葉低木。黄色の花をつける。春の季語。低山の明るい林の木陰などに群生する。樹木ではあるが、茎は細く、柔らかい。背丈は1mから、せいぜい2m、立ち上がるが、先端はやや傾き、往々にして山腹では麓側に垂れる。地下に茎を横に伸ばし、群生する。葉は鋸歯がはっきりしていて、薄い。晩春に明るい黄色の花を多数つける。多数の雄蕊と5~8個の離生心皮がある。心皮は熟して分果になる。
 北海道から九州まで分布し、国外では中国に産する。古くから親しまれた花で、庭に栽培される。花は一重のものと八重のものがあり、特に八重咲き品種(K. japonica f. plena)が好まれ、よく栽培される。一重のものは花弁は5枚。
 シロヤマブキ(Rhodotypos scandens (Thumb.) Makino)もあるが別属である。日本では岡山県にのみ自生しているが、花木として庭で栽培される事が珍しくない。こちらは花弁は4枚。
 古歌にも好んで詠まれ、しばしば蛙(かはず)とともに詠み合わせられる。太田道灌と八重山吹の話はよく知られている。山吹色といえば、オレンジ色と黄色の中間色のことである。往々にして小判の色をこれにたとえる。(山吹色のお菓子・・小判の隠語)

◇生活する花たち「菜の花・片栗の花・山桜」(横浜・四季の森公園)

3月29日(金)

●小口泰與
紅梅やシャッター音の蒼天へ★★★
春の炉や視界奪いし土埃★★★
青空へ薄紅梅の文目かな★★

●佃 康水
 第二音戸大橋(愛称 日招き大橋)開通 2句
日招きの大橋春の海へ耀る★★★
島結ぶ丹の大橋へ花盛り★★★
旅立ちの夢語る子へ春満月★★★★

●多田有花
花曇割る半熟のゆで卵★★★★
花曇とゆで卵は相通じるところがある。花の頃の高い曇り空と、白身に黄身が優しい丸を作るゆで卵。はっきりしないが、体に親しく馴染んでくるものだ。(高橋正子)

宅配のトラック止まる花の下★★★
護摩堂にうすむらさきの馬酔木咲く★★★

●桑本栄太郎
さみどりの坂の地道や春落葉★★★
春雨や角の畑地は分譲へ★★★
ジャージーの走る校庭花の雨★★★