●添削12月④●

[12月23日~31日]

▼12/31

●桑本栄太郎
目玉品値切る客あり年の暮★★★
暗闇を燈し切れざり冬の月★★★
歳晩の積み木広場や爺と孫★★★

●小口 泰與
雨毎に鮮やかなりし冬菜かな★★★
上州の風に磨ける干大根★★★
寒雀ふわりと小枝動きけり★★★

▼12/30

●高橋 秀之
大掃除終えて玄関注連飾る★★★
今年から家族総出で年用意★★★
自転車の買い物籠に冬の雨★★★

●川名ますみ
年用意日々の下着を新しく★★★
掃納はたきの羽根を整える★★★
・首都高目黒線より自然教育園を望む
冬の日に自然教育園しろじろ★★★

●桑本 栄太郎
買物の袋せり出し注連飾り★★★
歳晩のカート山盛りレジの前★★★
数へ日の呼び込み高きスーパーは★★★

●多田 有花
雨多き師走間もなく暮れてゆく★★★
土砂降りの小晦日なり家籠り★★★
こんがりとお好み焼きの小晦日★★★★

●小口 泰與
熱燗や母家の土間に風棲める★★★
土間のある母屋は、伝統的な日本の農家の代表的な間取り。熱燗で一杯やるが、風がすうすうしている。作者がお住まいの上州ならば、余計に、土間にも風が棲んでいると思われるのだろう。(高橋正子)

年寄りの集う日向や寒雀★★★
また一羽鳶と争う寒鴉★★★

▼12/29

●桑本 栄太郎
燦々と桜冬木の青空へ★★★★
早ばやと友の挨拶年暮るる★★★
煤逃げの客の多さよ珈琲館★★★

●川名ますみ
カーテンに石鹼匂う年の暮★★★
石鹼の香のカーテンと年の暮★★★
冬空に子どもが塗ったような青★★★

●高橋 秀之
ポップコーン持って映画に冬休み★★★ 
昨年の挨拶見返し賀状書く★★★ 
結露拭く指に寒さを感じつつ★★★

●多田 有花
本堂に注連飾られて陽の燦々★★★★
本堂に注連が飾られ、新年を迎える用意ができた。陽が燦々と降り注ぎ、注連の藁も清々しく匂うようだ。新年を迎える境内の清浄な風景だ。(高橋正子)

晴れてくる霧の中から冬の山★★★
数え日や仕事の車洗う人★★★

●小口 泰與
隼や鈍色の雲沸き立ちぬ★★★★
上州の風の磨ける冬芽かな★★★
干大根老婆の皺の深きかな★★★

▼12/28

●高橋 秀之
汽笛鳴るフェリーの後にゆりかもめ★★★★
フェリーが汽笛を鳴らし港を出てゆく、その後を追って、真白なゆりかもめが飛んでゆく。ゆっくりとした明るい景色がよい。(高橋正子)

拭き掃除机は仕事納めの日★★★ 
薄雲の隙間に明るき冬の月★★★ 

●小西 宏
低い雲に焚き火の匂い町の畑★★★
半纏の胡坐して綯(な)う注連飾り★★★
モスクワの思い出
雪の街のビニール店舗にバラ花束★★★

●桑本 栄太郎
数へ日や役目の多き吾が休日★★★
雲流れたちまち嶺のしぐれ空★★★
露天湯へ出でて中天冬の月★★★

●多田 有花
石投げて氷の厚さ確かめる★★★★
夕映えに満月の出て年の暮★★★
霙るるや柿を飛び立つ椋の群★★★

●小口 泰與
青空や老婆白菜よっこらさ★★★★
雪止むや谷川岳へ続く径★★★
狼の牙の如きや冬妙義★★★

▼12/27

●藤田裕子
柚子添えて焼き魚にも華やぎを★★★
小夜時雨忌中はがきを読み返し★★★
「火の用心」師走の町に声透る★★★

●桑本 栄太郎
青空に白く枝張り冬日燦★★★★
想い出は吾の来し方賀状書く★★★
小さくとも鉢に渦巻きミニ葉牡丹★★★

●多田 有花
盛り土もパワーショベルも霜の中★★★
犬抱いて凍れる池を見る親子★★★
ひとときを歳暮の晴れし頂に★★★

●迫田 和代
葉を落とし枯木の向こうに蒼い空★★★★
静まった平和公園の年の暮れ★★★
僅かだが緑の残る冬の街★★★

●小口 泰與
冬落暉瞳に残し帰宅せり★★★★
冬落暉のイメージとしてその荘厳さが目に浮かぶ。今日の無事を思い、明日もそうであることを願う落暉を自分の心に取り込んだ思いがよい。厳しい寒さの一日の終わりなればこそ。(高橋正子)

泛子飛びて流れに乗るや冬ぬくし★★★
日に焼けし農婦寒波の中に居り★★★

▼12/26

●小西 宏
ひかり満てる冬木に鳥の影を追う★★★★
冬ざれの崖に羊歯の葉青みたり★★★
枯れ果てし蒲の穂綿の千切れ飛ぶ★★★

●佃 康水
 公民館に参加
部屋中に青き香させて注連を綯う★★★
句はがきを立花に添わせ年用意★★★
序の如き一花真紅の八重椿★★★★

●桑本 栄太郎
初雪の朝日の中よ青空よ★★★★
初雪や橋を行き交う傘とりどり★★★
鳥罠を想いだしけり青きの実★★★

●多田 有花
木の間より冬陽を返す播磨灘★★★
見上げれば真青な空に長元坊★★★
裏白を採りて戻りし人と会う★★★★
年用意に裏白を採ってきた人と出会い、さわさわとした山の匂いに年改まる気持ちが掻き立てられる。すっきりと爽やかな年の暮である。(高橋正子)

●小川 和子
積雪のまず語られる電話越し★★★
霜降る夜に剥くしっとりとラ・フランス★★★
夫と居て賀状書く夜の更けゆけり★★★

●小口 泰與
鈍色の雲の下なる枯尾花★★★
白息やがたんと停まる吾妻線★★★
くしゃみして寝ている犬を驚かす★★★

▼12/25

●桑本 栄太郎
遠き日の吾が青春よイブの夜★★★
幾たびも演じられ来し聖夜劇★★★
馬小屋の桶に聖夜の灯りかな★★★

●多田 有花
日の光蘇り来るクリスマス★★★
雲晴れて北風の音高まりぬ★★★
クリスマス山を巡りて戻りけり★★★

●祝 恵子
透く袋蕪の白さが見えている★★★
鍬置かれ立ち入り禁止のクワイ畑★★★
初採りの冬菜根を持ち土落とす★★★★
秋に蒔いた菜が寒さの中にようやく育った。引き抜いた菜の根を持ち土をほろほろ落とす。寒そうな土と丈夫な根に冬菜の元気が見える。(高橋正子)

●井上 治代
冬空の寂しきまでに青深し★★★ 
恙なくひととせ終えて日記買う★★★★ 
清澄な空気を纏い冬菜採る★★★

●小口 泰與
あけぼのの手袋通す山風よ★★★
ひと筋の朝日に浮ぶ浮寝鳥★★★
長き夜を波のままなる浮寝鳥★★★

▼12/24

●小西 宏
冬空の叫ぶや鵯(ひよ)の一羽いて★★★
枯芝の球場ひとり球を投ぐ★★★
里山の道正しかり青木の実★★★

●桑本 栄太郎
曳航の泡の軌跡や冬の海★★★
雨降れば雪と見まごう夜の家路★★★
高階の窓につらなり冬燈洩る★★★

●川名ますみ
人参の朱を透かせし泥払う★★★★
観察がいいのだ。下五の「泥払う」は、生活を詠んで、一句を引き締めている。(高橋信之)

人参のポタージュスープにスパイスを★★★
ドアノブに人参詰めし紙袋★★★

●多田 有花
枯葉踏み日の光踏み森をゆく★★★
クリスマスリースを飾りステーキ屋★★★
クリスマスイブその夕焼けの明るさよ★★★★

●小口 泰與
あけぼのの赤城颪ぞ浴びに来よ★★★
中腹へ陽の射してをる時雨かな★★★
風止みて初冠雪の赤城かな★★★

▼12/23

●桑本 栄太郎
芽をつむぐ冬の並木に朝日かな★★★
枯草や売地看板のみ目立ち★★★
風落ちて嶺の昏れゆく冬入日★★★

●小西 宏
蔦枯れて木目の深し古館★★★★
枯蔦の絡まる古館。木目に着目し、枯れ、古びたものの味わいを詠んだのがよい。(高橋正子)

石塀に背伸びをすれば花八手★★★
枯葉積む藪に小綬鶏鳴いて消ゆ★★★

●多田 有花
猪のどどどと去りし冬の森★★★
冬の陽が所々にこぼれ降る★★★
一枚になりて外され古暦★★★

●小口 泰與
茶の花や真白き富士を眼間に★★★★
雪の富士と茶の花の取り合わせの句だが、眼間の富士の厳しさと、茶の花の白のやわらかさがよく出ている。(高橋正子)

幾列も朝日切り行く鴨の列★★★
三ケ日の蜜柑や富士を仰ぎ見る★★

12月25日(火)

★山中に鵯鳴きわが身まっ二つ  正子
「まっ二つ」との言葉は鵯のあの鳴声ならではと感じます。甲高く決して聞き惚れるような声ではありませんが、何か魂をゆさぶるようなところがあります。 (多田有花)

○今日の俳句
湯気立てて私の時間愉しめり/藤田裕子
「愉しめり」がいい。「私の時間」がいい。主婦の日常を詠んだ、作者のささやかだが、充実した生活が伝わってくる。この句を読めば、読者も「愉しめり」の境地になる。(高橋信之)

○冬黄葉(はりぎり/てんぐうちわ)

[はりぎり/東京白金台・自然教育園]

★冬もみぢ晩年すでに始るか/安住敦
★水底の紅葉水面の冬もみぢ/岡本眸
★冬もみぢ三面鏡に閉ぢ込める/塩路隆子
★鈍色の空にきはだつ冬黄葉/桐一葉

★てんぐうちわの黄葉がきらりきらり森の空/高橋信之

 ハリギリ(針桐、学名:Kalopanax septemlobus)は、ウコギ科の落葉高木で広葉樹。幹は直立し、高さ10-20m、大きいものは30mになる。別名、センノキ(栓の木)、ミヤコダラ、テングウチワ、ヤマギリなどがある。
 日本全土(特には北海道)・朝鮮半島・中国の山地に分布する。若木は枝や樹幹にとげがあるが、老木になるに従い鋭さを失い瘤になる。幹の樹皮に深く縦に入った筋(裂け目)がこの樹木を特徴づける。葉柄は長さ10-30cm、葉身は掌状に5-9裂し、カエデのような姿で径10-25cmと大きく、天狗の団扇のような形をしている。そこから「テングウチワ」と呼ばれることもある。秋には黄褐色に黄葉する。7-8月、黄緑色の小花が球状に集まったものが傘状につき、藍色の丸い果実を結ぶ。
 肥えた土地に自生するので、開拓時代はこの木が農地開墾の適地の目印であった。その為、北海道には大きな木が多く、明治末には下駄材として本州に出荷された。現在でも国内産の栓の9割は北海道産である。展開したばかりの芽は同じウコギ科のタラノキやコシアブラ、ウドなどと同様に山菜として食用にされる。見た目は「たらの芽」としてよく知られる近縁のタラノキの芽に良く似るが、苦味やえぐみとして感じられるあくがやや強い。しっかり灰汁抜きをすればコシアブラ同様に非常に美味であり、利用価値が高い。

◇生活する花たち「冬椿①・冬椿②・山帰来の紅葉」(横浜・綱島)

12月24日(月)

★柚子の香に頬のほのかに温まる  正子
料理用に絞った柚子の香りから、作者は二,三日前の冬至湯の湯気と香りを想い出された、と解釈しました。温かいのびやかな情趣を感じる御句です。(河野啓一)

○今日の俳句
風寒く晴れいて空に広き道/小西 宏
下五の「広き道」の解釈が難しいが、良寛が子どもの凧に書いた「天上大風」を思い、天上の「広き道」と解した。地上の「広き道」との解釈も可能だが、凧が揚がり、飛行機が飛ぶ大空の「広き道」である。(高橋信之)

○クリスマスローズ

[クリスマスローズ/ネットより]

★クリスマスローズ咲かせる窪の家/松崎鉄之介
★クリスマスローズ仰向くことのなく/椋本一子
★クリスマスローズかかへて友を訪ふ/坂本知子
★また一つクリスマスローズの鉢殖やす/渡邉紅華
★クリスマス来るたび母の誕生日/品川鈴子
★船上を人かげ歩むクリスマス/鷹羽狩行
★昇降機に英語満ち充つクリスマス/林翔

★牡蠣を焼きピザを頼みてクリスマス/高橋正子
★風邪に臥し一日清しクリスマス/高橋正子

 「クリスマスローズ」という呼称はクリスマスのころに開花する「ヘレボルス・ニゲル」だけを指した呼称であるが、日本の園芸市場では「レンテン・ローズ」と呼ばれる「ヘレボルス・オリエンタリス」なども「クリスマス・ローズ」の名前で出回る。多くの品種は、クリスマスのころではなく春に開花する。
 ヘレボルス(Helleborus)はキンポウゲ科のクリスマスローズ属に分類される植物の総称。ヘレボラスともいう。「チベタヌス」が中国の四川省から雲南省にかけて自生しているのを除けば、15の原種の全てが、東ヨーロッパからバルカン半島からトルコ、シリアに自生している。20世紀後半の品種改良は主にイギリスでヘレン・バラードや、エリザベス・ストラングマンによって進められた。「クリスマスローズ」という呼称も「イギリスのクリスマス」に開花するという意味である。夏は休眠状態となり根は活動を休止し、呼吸しているだけの状態となる。花に見える部分は植物学上では「花」ではなく「がく片」という部分である。そのため「鑑賞期間」が比較的長い。 ただし本来の花弁も蜜腺として残り、これが大きく発達したものを選別した品種もある。

◇生活する花たち「林檎の帰り花・山茶花・冬黄葉(くぬぎ)」(横横浜・四季の森公園)